遺産相続 債務の相続について

先月、会社を経営していた父が亡くなりました。

相続人は私と兄の二人で、会社は兄が承継する予定です。

兄と父の相続の話をした際に、父の負債として、会社の連帯保証債務が約1億円存在することを知りました。

兄は、その負債については自分が責任もって返済すると言っていましたが、負債も相続するという話を聞いて、私も相続によって父の負債の返済義務を負うことになるのではないかと心配です。

私は、法律的に父の負債を返済する義務を負うことになるのでしょうか。

法定相続分の範囲内で返済義務を負う

結論から言いますと、亡くなった方(被相続人)の連帯保証債務についても、法定相続分に応じて承継されますので、法定相続分の範囲内で連帯して債務を負うということになります。

ご質問の場合、相続人はお兄さんと二人とのことですので、法定相続分各2分の1の持分に応じて、それぞれ5000万円ずつ連帯保証債務を承継し、その額の範囲内で、本来の債務者と共に連帯して債務を負担するということになります。

連帯債務の相続について

まず、金銭債務については、可分債務であり、法定相続分に応じて当然に分割承継されます。

次に、「連帯債務」についてですが、連帯債務とは、各連帯債務者の内部的負担部分の有無や負担割合にかかわらず、債権者は各連帯債務者に対し、全額の支払いを求めることができ、各連帯債務者は全額の支払いをする義務があるという債務です。

これを連帯債務の全部義務性といいます。

そして、連帯債務のこの性質から、被相続人に連帯債務があった場合に、この全部義務性が各相続人にも引き継がれ、各相続人は連帯債務を承継して連帯債務全額の支払い義務を負うのか、それとも金銭債務である以上、法律上当然に分割され、相続人は相続分に応じた債務を負担するにとどまるのかという問題が生じることとなります。

この点、連帯債務の相続について見解は分かれていますが、最高裁判決において、連帯債務も金銭債務である以上、可分債権の一つに過ぎないとして、各相続人は当然に法定相続分に従って分割された額の範囲の債務を承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきであると判示されています。

なお、上記判決では、相続人と他の本来の債務者は連帯債務関係にあると述べられていますが、相続人間ではどうなるかについての言及はありません。

ただ、上記判決が、分割債務であることや相続が分割承継であることを重視していることを考えると、相続人間では連帯関係は否定されると考えてよいのではないかと思われます。

債務の相続について、当事者間で決めた内容が債権者へ効力を及ぼすのか

被相続人が、自身が負担する債務について、特定の相続人に相続させるよう遺言をしていたり、あるいは相続人間の遺産分割協議で、特定の相続人がある債務を相続する内容の合意をしたりすることがありますが、これらの行為は、相続人間での内部負担割合の指定、あるいは一種の免責的債務引受契約にすぎず、債権者には効力は及びません。

つまり、債権者は、全相続人に対し、法定相続分に応じて支払いを求めることができるということです。

したがって、ご質問のようなケースの場合、お兄さんとの二人の間の合意だけでご質問者が債務を免れることはできません。

実際にこのようなケースはよくあり、会社を引き継ぐ方や遺産の大半を取得する方が債務についても全額支払いを続ける旨の合意を相続人間で行うことが多く、この場合は、債権者との関係でも、債務を承継する人が免責的債務引受をするなどして、他の相続人に支払い義務が及ばないようにする必要があります。

身元保証や根保証債務について

参考までに、身元保証や根保証債務の場合はどうなるのかについても触れておきたいと思います。

まず、債務の中でも、芸術作品を制作するような債務や、雇用契約上の労務提供債務などは、他人が代わって引き受けられるものではないため、一身専属性のある債務とされ相続の対象とはなりません。

また、身元保証についても、特別な事情がない限り、相続性は否定されています。

そして、根保証については、判例は、限度額及び期間の定めのない包括根保証契約については、被相続人の死亡後に生じた債務についての責任を否定していますが、限度額及び期間の定めのあるものについては、一般的には相続性が認められています。

なお、貸金等債務の根保証については、保証人である相続人の死亡によって主たる債務の元本は確定します。

まとめ

以上のとおり、上債権者の同意や相続人間での協議が整えば、債権者との間で債務を承継する人が免責的債務引受をする方法が考えられますが、これらの条件が整わない場合、相続放棄の手続きを行えば、連帯保証債務についても相続する必要はありません。

相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとみなされますから、連帯保証債務からも逃れることができます。

同じような状況でお悩みの方は、個別具体的な事情によって適切なアドバイスをさせていただきたいと思いますので、まずは一度ご相談ください。

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