債務整理 個人再生(ハードシップ免責)

病気によって長期間の入院や治療が避けられなくなって収入が途絶えたり、病気により多額の治療費がかかることになったり、リストラによって失業するなどして年齢や景気によって再就職が困難な場合など、当初の再生計画とおりに返済していくことが極めて難しくなった場合。

その手段として、再生計画の変更申立ての制度がありますが、これによっても履行が困難である場合に利用できる制度として、いわゆる「ハードシップ免責」があります。

これは、個人再生における弁済計画に基づいて4分の3以上の金額の返済を行っていた場合に限り、その他いくつかの条件をすべて満たすことで、残りの債務の返済について支払義務の免除を受けることができるというものです。

これがハードシップ免責の制度です。

2 ハードシップ免責の要件

(1) 再生計画に基づく弁済のうち、4分の3以上の返済を終えていること

この制度は、債権者の同意を要せずに認められるもので、破産手続きによらずに破産免責と同様の効果を得る(残債務を免除する)というものですから、債権者の利益も考慮し、4分の3以上の額を既に弁済していることという厳しい条件が定められています。

この点、再生債務者は、返済状況一覧表を添付するなどして4分の3以上の額の弁済を終えていることを疎明しなければなりません。

(2) 再生債務者に責任のない事情によって、再生計画の履行が極めて困難となったこと

ハードシップ免責が認められるハードルが低いと、道徳的な観点からの問題も生じてしまいますので、「極めて困難となった」とは、再生債務者のコントロールが及ばないような事情に限定すべきであると考えられています。

例えば、一時的に収入が減少したような場合には、再生計画の変更が検討されるべきであり、容易にはハードシップ免責を認めるべきではないと考えられます。

そこで、どのような事情であればハードシップ免責が認められるかについてですが、返済が極めて困難となった事情はそれぞれの事案で様々ですので、申立てをしてみなければ分からないというのが実情です。

なお、過去の事例から、①収入がなくなり年金収入のみとなった上、心臓機能障害の病気を患っている高齢男性のケース、②末期がんにかかり弁済原資が捻出できないほど多額の治療費が必要となったケース、③失業したが腰椎椎間板症で就労不能で、夫も自己破産申し立てをしており弁済が困難となったケース、④家族のパーキンソン病が悪化し介護が必要となり退職したが、介護が必要不可欠なため再就職できず、父親の年金と本人のアルバイト代で生計を立てるも弁済が困難となったケース、⑤個人事業(レストラン経営)をしていたが売上の低迷と消費税増税により廃業し、本人も妻も70歳を超えて就労が難しく、生活保護を受給するに至ったようなケースなどで、ハードシップ免責が認められています。

このような事例から、本人や家族が重度の病気にかかって就労が見込めないことや多額の治療費を要する病気にかかったこと、申立て時の年齢などが考慮されているように思われます。

一方、「極めて困難となった」とは認められなかった事例として、①月の収入が3割程度減少したものの、その後収入が増加しており、収入の減少は一時的なものであると判断されたケース、②勤務先で配置換えがあり収入が半減したものの、生活状況を改め、月々の支出を見直すことにより弁済が極めて困難となったとまでは認められないと判断されたようなケースがあります。

(3) ハードシップ免責の決定をすることが、債権者の一般的な利益に反しないこと

「再生債権者の一般の利益に反するものでない」とは、既に弁済済みの総額が、再生計画認可時の清算価値を下回らないことを意味します。

例えば、再生計画によって総額100万円を弁済することになった再生債務者が、再生計画認可時に60万円相当の資産の清算価値があった場合、弁済予定額の4分の3である75万円を支払った段階で要件を満たしますが、これが80万円相当の資産の清算価値となると、80万円を支払い終えてなければ要件を満たさないということになります。

これは、個人再生における清算価値保障原則によるもので、特に、認可された再生計画が清算価値の総額を弁済額とするものの場合は、必然的にこの要件を満たさないということになりますので、注意が必要です。

(4) 再生計画の延長(再生計画の変更)をしても、支払の継続が極めて困難であること

再生計画とおりに返済ができなくなった場合、再生計画の変更によって対処することが可能である場合には、まず再生計画の変更によるべきであり、再生計画の変更によっても再生計画を遂行することが困難である場合に初めて、ハードシップ免責が認められるものと考えられます。

ですので、ハードシップ免責の申立てをする再生債務者は、事前に必ず再生計画変更の可否を検討すべきということになります。

手続きの流れ

(1) 申立て

ハードシップ免責の申立ては、再生債務者の申立てに基づいて始まります。

申立書には、要件に該当する事実を具体的に記載し、その事実を証する書面を添付します。

なお、具体的な添付資料として、①再生債務者に責任がないことを証する書面として、診断書や離職届、陳述書等、②4分の3以上の弁済があることを証する書面として、返済状況一覧表、振込依頼書、領収証等、③再生債権者の一般の利益に反するものではないことを証する書面として、清算価値算出シート、財産目録等が考えられます。

また、手続きに必要な費用としては、①申立手数料の収入印紙1000円(申立書に貼付する)、②裁判所予納金(官報公告費用)3670円、③個人再生委員の報酬(事案により額を決定されるが、最低5万円)です。

(2) 個人再生委員の選任

裁判所から選任された個人再生委員は、一定の期間(通常、選任から2週間)内に、ハードシップ免責の要件を満たしているか否かの意見書を裁判所に提出します。

裁判所は、ハードシップ免責の要件が一応満たされており、届出再生債権者への意見聴取が相当である旨の意見書が提出されると、届出再生債権者の意見聴取手続きに進みます。

(3) 届出再生債権者の意見聴取

届出再生債権者の意見聴取は必要的とされていますが、意見聴取の方法については特に定めがなく、裁判所の裁量により適当な方法で行われます。

一般的には、意見聴取書を送付し、意見のある届出再生債権者が裁判所に対して回答期限内(通常、2週間)に書面で回答する方法により意見を聴取することが多いようです。

(4) 免責決定

裁判所は、届出再生債権者からの意見及び個人再生委員の意見(免責が相当であるか否かの意見書が提出されます)を踏まえ、免責するか否かの判断を行い、免責相当という判断になれば、免責決定がなされます。

まとめ

以上のとおり、ハードシップ免責には、再生債務者の事情やこれまでの返済の状況、再生債権者の一般的な利益に反しないという目的から清算価値保障原則との関係など厳密な要件が定められており、これによって免責決定を得るのは、ハードルの高い制度となります。

なお、東京地方裁判所破産再生部においては、平成23年1月から平成28年12月までの6年間に6件の申立てがあり、うち4件について免責の決定がなされ、2件が取り下げられました。

このように、一般的によく利用されている制度とは言い難いものではありますが、要件を満たして免責決定を得ることができれば、以後、債務の返済は免除となり、破産手続きによらずに手続きを終えることができますので、再生債務者にとって非常にメリットのある制度です。

ただし、前述のとおり、厳密な要件が定められていることやそれぞれの事案に応じて慎重に検討する必要があり、専門的な知識をもって対応することが求められますので、同じような状況でお悩みの方はまずは一度ご相談ください。

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