裁判を起こすにあたって

裁判管轄(土地管轄)

民事訴訟を提起する場合、請求の内容にもよりますが、どこの裁判所(例えば、福岡地方裁判所か東京地方裁判所かなど)に裁判を起こすことができるのかという問題<があり、これを裁判管轄(土地管轄)の問題といっています。

裁判所の土地管轄は、原則として被告の現住所地を管轄する裁判所ですが、現実には多くの裁判は原告の住所地を管轄する裁判所に提起されます。

訴えを起こしたい方からすれば、訴えたい相手方が遠方に住んでいるからといって、相手方の住所地を管轄する裁判所に裁判を起こすのは不便であり、出来るだけ避けたいと考えるのがふつうであるからです。

具体的には、例えばあなたが福岡市に住んでいるとして、東京地方裁判所で裁判をするということになると、裁判の期日に出頭する場合の交通費が掛かったり、弁護士を依頼する場合に、福岡の弁護士に依頼すれば弁護士が出張する際の費用が掛かることになります。

また、東京の弁護士に依頼する場合には、裁判の打合せをどのようにして行うのか、という点で不便な面があります。

このように、どこの裁判所で裁判を起こすことができるのか、という点は、かかる費用や費やす時間や労力という観点から、軽視できない重要な問題となることもあります。

また、訴えの種類(訴訟類型)により、原告または被告の住所地以外にも管轄となる裁判所があります。

以下では具体例を挙げて、主な訴訟類型の裁判管轄について紹介します。

具体例 現住所 管轄する裁判所
原告(訴える側) Aさん 福岡県福岡市在住 福岡地方裁判所
被告(訴えられる側) Bさん 東京都世田谷区在住 東京地方裁判所
(1)財産権に関する訴え

財産権に関する訴えとは、例えば、お金を貸したが返済がない場合にその返済を求める場合(貸金返還請求訴訟)、労働者が会社に対して未払い残業代を請求する場合(未払い賃金請求訴訟)等です。

これらの訴訟は、民事訴訟法という法律で、義務の履行地(支払いをすべき場所)で提起することができるとされています。

ほとんどの財産上の権利義務は、義務がある人(債務者)が権利のある人(債権者)のところへ行って、義務の履行を行うべきとされています。

したがって、この財産権に関する訴えに該当すれば、被告の住所地ではなくて、原告(債権者)の住所地が義務履行地となり、そこで裁判を起こすことができるのです。

すなわち、上記の例でいえば、お金を貸していて返済を求める側の住所地であったり、未払い残業代を請求したい労働者の住所地で訴訟提起をすることができるということです。

訴訟類型 土地管轄(訴状を提出できる裁判所) 具体例のケース
財産権に関する訴え 原告Aさんの住所地を管轄する裁判所 福岡地方裁判所
(2) 不法行為による損害賠償請求

不法行為による損害賠償請求<というのは、原告が被告に対して、違法に権利を侵害されたと主張して損害賠償請求する場合です。

例えば、交通事故の被害者が加害者に対して、治療費や慰謝料の支払いを求めて損害賠償請求をする場合、傷害事件の被害者が加害者に対して、治療費や慰謝料の支払いを求めて損害賠償請求をする場合等です。

この不法行為による損害賠償請求の場合、その不法行為が行われた場所で裁判を起こすことができることが民事訴訟法に定められています。

すなわち、例えば、あなたが福岡県福岡市在住(Aさん)で、大阪府大阪市で交通事故に遭い相手方が東京都世田谷区在住(Bさん)であった場合に、相手方の住所地である東京地方裁判所ではなく、交通事故の現場である大阪市を管轄する大阪地方裁判所に裁判を起こすこともできるのです。

訴訟類型 土地管轄(訴状を提出できる裁判所) 具体例のケース
不法行為による損害賠償請求 原告Aさんの住所地を管轄する裁判所 福岡地方裁判所
被告Bさんの住所地を管轄する裁判所 東京地方裁判所
不法行為が行われた場所 大阪地方裁判所
(3)不動産に関する訴え

不動産に関する訴えとは、例えば、土地の所有権に争いがある場合に、土地の所有権の所在を明らかにするためにする土地所有権確認請求や、賃料不払い等により賃貸借契約を解除された賃借人に対して提起される建物の明渡し請求訴訟等です。

この不動産に関する訴えの場合、その不動産の所在地でも裁判を起こすことができます

例えば、所有権を確認する土地の所在地を管轄する裁判所であったり、建物明け渡しの対象となる建物が所在する場所を管轄する裁判所で裁判を起こすことができるのです。

なお、不動産の売買代金を請求する場合や、不動産の賃料を請求する場合等は、不動産に関する訴えには当たりません

訴訟類型 土地管轄(訴状を提出できる裁判所) 具体例のケース
不動産に関する訴え 原告Aさんの住所地を管轄する裁判所 福岡地方裁判所
被告Bさんの住所地を管轄する裁判所 東京地方裁判所
不動産の所在地を管轄する裁判所  
(4)事務所又は営業所を有する者に対する訴え

事務所又は営業所に関する業務に対する訴えは、事務所又は営業所の所在地で裁判を起こすことができます。

訴訟類型 土地管轄(訴状を提出できる裁判所) 具体例のケース
事務所又は営業所を
有する者に対する訴え
原告Aさんの住所地を管轄する裁判所 福岡地方裁判所
事務所又は営業所の住所地を管轄する裁判所  
代表者等の住所地を管轄する裁判所  
(5)相続権・遺留分に関する訴え、遺贈・死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え

相続開始時における被相続人(亡くなった方)の住所地で裁判を起こすことができます。

訴訟類型 土地管轄(訴状を提出できる裁判所) 具体例のケース
相続権・遺留分等に関する訴え 原告Aさんの住所地を管轄する裁判所 福岡地方裁判所
被告Bさんの住所地を管轄する裁判所 東京地方裁判所
被相続人の住所地を管轄する裁判所  

 

以上の通り、どこの裁判所に訴えを起こすことができるかが法律に定められており、裁判管轄が複数ある場合というのもあります。

すなわち、A地方裁判所においても、B地方裁判所においても訴えを起こすことができる場合で、その場合どこに訴状を提出するか、原告において選択することができます。

もっとも、管轄裁判所が複数ある場合(例えば、福岡地方裁判所と東京地方裁判所のどちらでも訴訟提起が可能な場合)に、どちらの裁判所で訴訟を進行するのが適切であるかについて、当事者の意見が対立することが考えられます。

そのような場合、必ずしも原告が訴訟提起した裁判所で訴訟が行われるわけではなく、裁判所の判断によってどこの裁判所で審理をするのかについての決定がなされることになります。

裁判所の判断においては、様々な具体的な事情が考慮されることになりますので、一度弁護士に相談された方が良いと考えます。

貼用印紙額について

訴訟提起をする原告は、訴状に収入印紙を貼らなければなりません

収入印紙を購入し、訴状に貼ることで、裁判の手数料を裁判所へ納付することになるのです。

収入印紙の額は、訴額といわれる裁判で問題となる争いの経済的な価格を一定の方法により算定した金額により決まることになります(訴額の算定については民事訴訟費用等に関する法律に定められておりますが、ここでは詳細な説明は省略させていただきます)。

例えば、100万円の売買代金の支払いを請求する場合、1万円の収入印紙が必要になります。

同様に、1000万円の売買代金の支払いを請求する場合、5万円、5000万円の売買代金の支払いを請求する場合、17万円の収入印紙が必要になります。

正確には、訴額に応じて、以下の金額の印紙代が必要になります。

手数料額早見表 | 裁判所

ただし、手数料の額が100万円を超える場合は、収入印紙に代えて現金で納付することもできます(納付先は日本銀行本店、支店、代理店又は歳入代理店に限られます。)

予納郵券について

予納郵券とは、郵便切手のことです。

原告が訴訟を提起すると、裁判所は被告等に対して、訴状、呼出状、判決等の書類を郵送(送達)します。

これらの書類を送達するたびに郵便切手を納付させては手続きが煩雑になるので、裁判所は予想される数回分の送達に要する郵便切手を原告に予め納付(予納)させるのです。

訴訟が終了した段階で、予納郵券で未使用分があれば返却してもらえます。

反対に、訴訟が長引いて予納郵券に不足分が出た場合には追納を求められます。

予納郵券の額は、全国の裁判所で統一されておらず、各裁判所によって金額や必要枚数が異なっています。

ちなみに福岡地方(簡易)裁判所の場合は以下の様になっています。

【福岡地方(簡易)裁判所の場合】
  • 500円× 8枚(相手方が一人増すごとに+4枚)
  • 100円× 8枚
  •  82円×10枚
  •  20円×10枚
  •  10円×11枚
  •   5円×10枚
  •   2円×10枚
  • 合計 6000円分

簡易裁判所と地方裁判所の違い

原告になる場合を想定した場合、地方裁判所と簡易裁判所は、ひとことえいえば請求額の大きさによって振り分けがなされることになっています。

具体的には、請求額が140万円以下ならば簡易裁判所の事件、140万円を超えると地方裁判所の事件となります。

どちらの裁判所も通常訴訟においては、証拠により事実を立証していく原則など、根本的なやり方には違いはありません。

また、判決や裁判の中での和解の効力についても、地方裁判所と簡易裁判所で違いはありません。

ちなみに、裁判の中での和解の内容が調書に記載されると、その調書の記載は裁判所がした確定判決と同じ効力を持つことになります。

すなわち、裁判上の和解であれば判決と同様に、そこに記載された義務が履行されなければ強制執行手続によって権利の内容を実現することができるようになるのです。

裁判以外にも簡易裁判所には、身近な民事紛争を話し合いで解決するための調停という制度がありますが、民事調停は、裁判官又は民事調停官と二人以上の民事調停委員によって構成された調停委員会が当事者双方の言い分を十分に聴いて双方の合意を目指すものです。

調停で合意が成立し、その内容が調書に記載されると、その調書の記載は裁判所がした確定判決と同じ効力を持つことになります。

一方、簡易裁判所と地方裁判所で異なる点もいくつかあります。

まず、出廷できる代理人には違いがあり、簡易裁判所においては裁判所が許可すれば誰でも代理人になれますが、地方裁判所においては、弁護士のほかは会社の支配人など、限られた人しか代理人になることができません。

また、簡易裁判所においては、被告は擬制陳述といって出廷することなく、書面によって主張をすることができるのに対して、地方裁判所では、第1回期日においてしかこの擬制陳述は認められません。

ページ上部へ戻る

初回法律相談30分無料 電話で予約 092-406-3000

初回法律相談30分無料 メールで予約

弁護士法律相談コラム