裁判の被告になったら

突然、裁判所からあなたの下に『訴状』という書面が届いたら…。

ある日思いがけず民事訴訟の被告になってしまったら、どうしたらいいのかわからなくて、慌ててしまう方が多いのではないかと思います。

そこで、民事訴訟の被告になった場合の対応についてお話しします。

まずは書類の内容を確認してみる

まずは,落ち着いて,裁判所から届いた書類の内容を確認してみましょう。

裁判所から届いた封筒の中には、「訴状」、「証拠説明書」、「甲号証」、「口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状」、「答弁書のひな型」等の書類が含まれていると思います。

訴状には、原告、被告といった当事者の記載の後に、必ず「請求の趣旨」という記載があります。

この、「請求の趣旨」の内容こそが、相手方つまり原告が、あなたつまり被告に対して求めていることです。

具体的には、「被告は、原告に対して、金300万円を支払え」、「被告は、原告に対して、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」などと記載されているはずです。

その後に、「請求の原因」というタイトルであなたと相手方との間の従前の経緯や契約の内容などの事実の記載がなされていると思います。

これらの事実の記載は、相手方があなたに対して求めている請求の趣旨の内容を基礎づける主張です。

そして、その主張を裏付けるために、「甲号証」(裁判では、原告が提出する証拠を甲号証、被告が提出する証拠を乙号証と呼びます。)という証拠が提出されており、その証拠の標目やその証拠が具体的に立証する趣旨を記載した書類が証拠説明書です。

「口頭弁論期日呼出及び答弁書催告状」は、文字通り、口頭弁論期日に裁判所に来てください、答弁書という回答書類をいつまでに提出してくださいという、裁判所からの要請が記載されたものです。

答弁書の記載の仕方は、「答弁書のひな型」というものを参考にして記載するようになっています。

欠席判決を避けるために答弁書を提出する

あなたは、訴状や甲号証の内容を確認してどう思ったでしょうか。

「初めてみる書類ばかりだし、なんだか悪いことをしたかのようで落ち込んでしまう」、「どうして私が裁判の被告にされなければならないのか、相手への腹立たしさで答弁書を作る気も起こらない」、「相手はあることないこと主張しているけど、実際はそういうことじゃないのになぁ…」等と思われた方もいらっしゃると思います。

ここで、あなたが被告になった際の対応として、最初にすべきことを言います。

それは、答弁書を作成して口頭弁論期日の前に裁判所に提出するということです(※必ずしも裁判所からの書面に記載されている期限内に提出しなくてもいいです。)。

なぜ、答弁書の記載・提出をしなければならないかというと、もしあなたが答弁書を提出せずに口頭弁論の期日にも出席しなかったとすると、相手方の主張がすべてそのまま裁判(いわゆる「欠席判決」と呼ばれるもので、原告の請求は全部認容となります。)で認められてしまうからです。

あなたからしてみると、相手方の主張していることは事実に反するでたらめで、こんな主張が裁判所という場で認められるはずがないと考えるかもしれません。

しかし、裁判所は必ずしも客観的な真実を探求する場所ではなく、当事者双方の主張を比べてどちらがより合理的かということを判断する場所です。

ですから、当事者双方がお互いに自らの主張をしていることが前提となっているのです。

もし、被告が原告の主張内容等を認識している(書面が被告に届いている)にもかかわらず何の主張もしない場合、裁判所は、原告が主張している内容に対して被告は異議がないものとみなします。

ですから、そうならないために、まずあなたがするべきことは、答弁書を作成してこれを裁判所に提出することです。

あなたの主張が適切に記載されている答弁書を提出しておけば、仮にあなたが第一回目の口頭弁論期日に出頭しなかったとしても、答弁書に書かれていることをあなたが口頭弁論期日に述べたものとして扱われる(このことを「擬制陳述」といいます。)ため、欠席判決により敗訴することはなくなります。

なお、答弁書の提出期限は、通常口頭弁論期日の1週間前になっていることが多いですが、これは、原告に対しても期日の前に被告の言い分を確認してもらうために手続上そのような期間を目安として設定しているにすぎません。

ですから、その期日までに提出しなければ答弁書の提出が無効になるというものではありませんので、裁判所の書面に記載されている提出期限が過ぎているとしても、口頭弁論期日の前であれば必ず答弁書を作成して提出してください(郵送すると期日に間に合うかどうか不安という場合には裁判所に郵送することを連絡しておくか直接裁判所に行って提出してください。)。

答弁書を作成するにあたっての注意点

答弁書を作成するにあたって、頭に入れておきたい裁判の原則が二つあります。

一つ目は、「民事裁判では、当事者間に争いがない事実は判決において事実と認められ、争いがある事実のみが証拠調べの対象となる。そして、一度相手方が主張している事実を認めてしまうと原則として後に争うことはできない」ということです。

当たり前のことのようですが、これは大事なことです。

前にも書いた通り、裁判所は客観的な真実を探求する場所ではなく、当事者間で争いのある事実についてどちらが言っていることがより合理的かを判断する場所です。

ですから、当事者間に争いがない事実については、そもそも基本的に証拠調べは行われません。

したがって、相手方の主張する事実をむやみに認めないことが重要です。

相手方もしくは相手方の弁護士が書いた訴状に書いてある事実の意味づけが不明な段階でその事実があったことを認めてしまうと、実際には自分が思っていたことと違うことを認めて撤回できなくなってしまうことがありえます。

ですから、訴状に記載されている事実に不明瞭な記載がある場合には、安易に事実を認める前に、具体的にどういう意味なのかを相手方に対して必ず確認するようにしましょう。

二つ目は、「民事裁判においては、裁判期日における口頭での主張だけでなく、書面による主張・立証の整理が有効な手段であり、かつそれが求められている」ということです。

裁判というと多くの人は、海外の法廷ドラマのように弁護士が法廷を自由に歩き回りながら身振り手振りで裁判官や陪審員に対して情熱的に自らの主張を展開する場面を想像されるかもしれません。

しかし、実際の裁判においては、事前に裁判所及び相手方に書面を提出したうえで、裁判期日で、「訴状(答弁書)のとおり陳述します。」と陳述するのが一般的です。

裁判の期日で突然、書面に記載していない主張を展開することは想定されていませんし、求められてもいません。

あなたの主張を裁判所や相手方に理解してもらうための方法としては、裁判実務の形式に従った主張書面及び契約書や領収書といった証拠(これらを「書証」といいます。)を提出してすることが求められているのです。

そうすることにより、裁判所が正確に当事者間の主張や争点を把握し、適切に判決を下したり、和解を勧めたりすることができるのです。

具体的に答弁書に記載すべき内容について

まず、答弁書を作成する際には、相手方の主張をよく把握しておくことが重要です。

そこで、一度冷静になって、訴状を読みながら裁判になっている出来事を思い出してみてください。

そうすると、あなたの言い分と相手方の言い分のどこが食い違っていて、あなたが言いたいことは何かということがいくつか浮かんでくると思います。

そこがいわゆる争点と呼ばれるところです。

争点は一つとは限りません。

例えば、原告から300万円の貸金返還請求訴訟を起こされているとします。

あなたの認識としては、確かに原告からお金は受け取っているが、これはあげるといわれてもらったものだし、しかも金額は200万円だったという場合には、争点は2つということになります。

答弁書の記載に当たっては、その争点を常に意識しておくようにしましょう。

そのうえで、以下答弁書に記載する内容について順を追って説明します。

(1) 日付・当事者・事件番号・事件名

日付については答弁書を記載した日を記入してください。

それから、被告であるあなたのお名前ご住所連絡先等を記載します。

事件番号とは、訴状に令和2年(ワ)第○○号などと記載されているものです。

訴状と同じ事件番号を記載してください。

ちなみに事件番号の()内の文字は、事件記録符号とよばれるもので、(ワ)は地方裁判所に継続している通常の第一審訴訟事件、(ハ)は簡易裁判所に継続している通常の第一審訴訟事件を意味します。

(2) 請求の趣旨に対応する記載

訴状の請求の趣旨には前に述べた通り、被告は原告に対し、○○円を支払えとか、不動産を明け渡せといった内容の、記載があります。

これに対して、被告が記載する答弁書の定型的な文言は、「原告の請求を棄却する」です。

また、訴状には、被告に○○をせよという内容の記載とは別途、訴訟費用は被告の負担とするという文言も記載されているはずです。

これに対する、被告が記載する答弁書の定型的な文言は、「訴訟費用は原告の負担とする」です。

なお、ここにいう「訴訟費用」とは、「証人の日当・旅費、訴訟提起にかかる裁判所の手数料(印紙代)、鑑定費用」のことであり、弁護士に依頼する費用は含まれません。

ですから、「訴訟費用は原告の負担とする」という判決が出たとしても、弁護士に依頼して弁護士に支払った費用を原告に請求できるわけではありません。

したがって、被告が答弁書に記載する請求の趣旨に対する典型的な記載としては

1 原告の請求を棄却する

2 訴訟費用は原告の負担とする

との判決を求める。

ということになります。

(3) 請求の原因に対応する記載

前に述べた通り、訴状には請求の趣旨以外に請求の原因という記載があります。

請求の原因の中に記載されている事実は、原告が被告であるあなたに対して何かを求める法律上の根拠となる事実が必ず含まれています。

具体的には、前に事例として挙げた300万円の貸金請求訴訟の場合には、いついつどこどこで原告とあなたが会ってその際に原告があなたに対して300万円を渡したこと、その時にその金額をいつ返すという約束をしたこと、約束をした期限にあなたからの返済がなかったこと、といった事実が含まれています。

このような具体的な事実の一つ一つについて、あなたは被告として、「認否」と呼ばれる作業をしなければなりません。

たとえば、いついつどこどこであなたが原告と会ったこと、その時にお金を受け取ったこと、については認めるけど、返すという約束をしたことは否認するし、受け取った金額は300万円ではなく200万円でした、ということを述べる必要があります。

この点、前に述べた通り、請求の原因の記載の中に、不明瞭な点があった場合、不明瞭なまま認否をするのではなく、認否は留保して、その内容を明確にするために確認するようにしましょう。

具体的には、「訴状〇ページに記載されている○○の部分はこういう意味でいいのか回答を求める。同記載部分の認否については原告からの回答を得たうえで行う。」というような記載をすればよいです。

(4) その他の事情について

事案を正確に裁判所に理解してもらうために必要と思われることは、積極的に記載しましょう。

例えば、あなたと原告との関係性や、裁判を起こされるまでに何らかのやり取りをしたことがあれば、その内容などを記載すると、事案の把握がより正確になるかと思います。

(5) 書証

答弁書であなたの主張を記載したなら、次はご自身の主張に沿った証拠についても整理してみましょう。

例えば、300万円の貸金請求訴訟において、あなたが200万円をもらったと主張しているとして、あなたと原告が会ったとされる日に、あなたがLINEで原告に「200万円ありがとう。大事に使わせてもらうね!」と送信しており、これに対して原告が「どうしたしまして」と返信しているような場合、そのLINEのやり取りの内容はあなたが原告から200万円を受け取ったことを推認させる資料となります。

また、あなたが原告からもらった200万円を当日あなた自身の銀行口座に入金していた場合には、そのことが記帳された通帳の写しも、同様にあなたが原告から200万円を受け取ったことを推認させる資料となります。

あなたが通帳の写しを書証として提出する場合、あなた名義の預金通帳の写しが立証する事実は、〇月〇日に200万円があなた名義の口座に入金されていることです。

これにより、当日原告からあなたが受け取ったお金が300万円ではなく200万円であったことが推認されます。

もっとも、300万円を受け取っていたけど、銀行に入金した金額が単に200万円だったということも考えられますし、別の口座に100万円入金しているかもしれませんので、金額が300万円ではなく200万円であったということを推認させる証明力は、LINEのやり取りに比べたら弱いといえます(仮に300万円をもらったのであれば、くれた相手に対してお礼をするときに少ない金額を記載することは考えづらいですし、相手もそのことについて何も言及しないことも不自然ですので、前に述べたような金額を明記したやり取りが残っていればそちらのほうが金額についての証明力は強いといえます。)

弁護士への依頼

以上が、訴訟提起された際に被告としてなすべきことですが、相手方の法律上の主張のどの部分が自分の主張と異なっているかという争点を明確にして、それに対してこちらが法律上どういう主張をするべきか、そのために効果的な証拠としてどのようなものがあるかということを判断したうえで効果的に反論することは、それほど簡単なことではないですし、慣れていなければ面倒なこともあります。

そこで、法律の専門家である弁護士にアドバイスを受けるために法律事務所に相談に行くことや、必要であれば訴訟の代理人として弁護士に依頼することをお勧めします。

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