自己破産 滞納税金 / 年金受給権 / 偏頗弁済行為

滞納税金がある場合、自己破産手続きでどのように取り扱われるのか

個人事業主の方で、所得税・消費税の滞納や市県民税の滞納、国民健康保険や国民年金の滞納が大きな金額あり、自己破産によってそれらの滞納がどのようになるのか、ご心配の方もおられると思います。

まず、そもそも自己破産をする方は借金の返済をする義務がなくなる(破産法の用語でいうと「免責」を受けることができる)ことを目的として、手続をされる方がほとんどであると思います。

しかし、この破産免責の効果は、税金等の公租公課には及びません。すなわち、自己破産したとしても、税金の滞納分や健康保険の滞納保険料等は支払い義務が残ってしまうのです。

そして、この税金のうち、破産手続開始決定当時、納付期限が未到来のものと納付期限から1年間を経過していないものは「財団債権」といって、最も優先的に支払われるカテゴリーに分類されます(破産法148条1項3号)。この「財団債権」として取り扱われる租税債権の延滞税等は、本税と同様、「財団債権」となります。

また、破産手続開始決定後に、換価及び配当に関する費用に該当する税金は「財団債権」となり、それ以外のものは、「劣後的破産債権」といって配当にあたっては劣後的に取り扱われます。

さらに、国民健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料、社会保険料、労働保険料などの公課についても、納期限によって「財団債権」と「優先的破産債権」が区別されることとなります。

なお、公共下水道料金や駐車場違反などの放置違反金についても、「滞納処分の例により徴収することができる」こととなっているため、公租公課と同様に、破産手続の中で優先的に弁済を受けることとなります。

自己破産した場合の年金受給権について

自己破産をしてしまうと、将来年金を受け取ることができなくなってしまうのではないか?もしくは自己破産をしてしまうと、現在受け取っている年金が受け取れなくなってしまうのではないか?そのような不安を持たれる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

しかし、自己破産によって年金受給権が無くなったり、年金受給額が減らされたりすることはありません。

もっとも、一口に年金といっても、国民年金、厚生年金、企業年金といくつもの種類の年金があり、一般的には三階建て構造になっているといわれています。これらの年金の全ての種類について、自己破産の影響はないのでしょうか?

ズバリその答えは、全ての年金について、自己破産が影響を及ぼすことはありません。企業年金であっても自己破産したことにより換価されるわけではありません。

なお、皆様が年金のつもりで掛け金を払っている民間の保険会社との保険契約に基づく受給権(公的年金ではなく私的な年金)は、自己破産手続をすると、財産として換価の対象になります。

すなわち、自己破産手続において、年金保険として積み立ててきたものは解約されるか、もしくはその解約返戻金に相当する金銭を支払うのと引き換えに年金保険を継続するのかという形で、大きな影響を受けることになるのです。

お世話になった方にだけ借金を返してしまったとしても、後に元に戻すよう強制されることがある(偏頗弁済行為は否認されることがある)

破産者が破産する直前に、「絶対に返済すると約束して借り入れをした友人には絶対に迷惑はかけられない」といって、借金を全体的に返済することは不可能であることを認識しながら、「特定の友人」にだけ借金を全額返済したら、どうなるでしょうか??

このような行動は、人間としてむしろ正しい行動であると考える方も結構いらっしゃるかもしれません。自分の置かれている状況が悪くなったとしても、約束を守ることは非常に大切なことです。

しかし、破産をする方は、他の方にもお金を借り入れていたり、物の代金を支払わなくてはいけなかったり、他にも支払いを待っている方がいることでしょう。そのような場合に、他の債権者には返済ができないにもかかわらず、「特定の友人」にだけ借金の返済をしてしまっていいのでしょうか?

破産法の考え方からすると、答えはノーです。支払いが極めて困難な状況になった時点から、破産法は、「債権者平等」というものにすごく重要な意義を認めています。その理由はシンプルで、支払ができない状況に陥ったのなら、後処理は粛々とやらなければならない、しかし、担保がない債権者の間で、早い者勝ち、怖いもの勝ち、ずるいもの勝ちを極力許してはならない、というところにあります。

具体的には、破産事件が開始され、破産管財人が選任されると、破産管財人が、「特定の友人」にだけ返済をしている事実を認識し、返済を受けた「特定の友人」に対して、返済を受けたお金を返すよう請求することになります。少し難しい言い方をすると、「特定の友人」に対する返済は、偏波弁済ということで否認権行使の対象となり、否認権が行使されると返済行為自体が破産財団との関係で無効となるので、破産管財人は、「特定の友人」に対して、返済されたお金の返還を請求することが可能となるということになります。

このように、自己破産をされる場合、「特定の友人」にだけ返済をしたいと考えたとしても、そのことを破産の申立を依頼する弁護士に隠したりすると、それに伴うデメリットも想定できないままとなってしまいますので、まずは破産の申立を依頼する弁護士にしっかり話をすることが重要であると思います。

ページ上部へ戻る

初回法律相談30分無料 電話で予約 092-406-3000

初回法律相談30分無料 メールで予約

弁護士法律相談コラム