遺産相続 遺産分割の遺漏が判明した場合

遺産分割の遺漏が判明した場合

遺産の遺漏とは、共同相続人が遺産分割協議を完了した後に、遺産分割協議の時には、全ての相続財産につき分割したつもりであったが、その後になってから、相続財産の一部が未分割のまま残っていたことが判明した場合をいいます。

このような場合、まずは、新たに判明した遺産の存在が、先になされた遺産分割協議の効力に影響を与えるか、その遺産分割協議についての意思表示の瑕疵の点がまず問題となります。

次に、当初の遺産分割協議が有効とした場合は、その遺産分割後に新たに判明した遺産をいかに処理するかが更に問題となってきます。

遺産の遺漏と遺産分割協議の効力について

遺産分割協議書を作成したときに分からなかった財産が判明した場合、その遺産分割協議が当然に無効となるわけではありません。

遺漏のある遺産分割の合意も、あくまで当事者が「この分割内容で合意しよう」という意思が合致した結果ですので、簡単に無効とすることはできないのです。

すなわち、遺産の一部についての遺産分割も、遺産分割協議としては有効ですので、後に遺産の遺漏が判明したとしても、原則として、先行する遺産分割協議は有効といえます。

この場合は、遺産分割協議後に判明した残余財産について、後述のとおり、その分割方法が問題となり、その際には当事者の意思解釈が問題となります。

しかし、後述のような特別の事情がある場合には、遺産分割協議についての意思表示の瑕疵により、先行する遺産分割協議が無効とされることがあります。

すなわち、その遺漏した財産の価値、内容等を考慮し、「最初の分割時に、事後判明した遺産の存在がその時点で判明していたならば、全く異なった遺産分割になっており、当初の遺産分割が遺産分割として意味をなさないような場合、すなわち最初の遺産分割協議を当事者は決してしなかったと考えられる等の特別な事情がある場合には、最初の遺産分割協議は錯誤により無効となることもあります。

その場合には最初の遺産分割協議の対象とされた遺産と、事後に判明した遺産の全てを対象として遺産分割協議をやり直すことになります。

一部分割の可否
(1)相続財産の一部分割は法律上有効と解されています。

遺産の分割は、明文の規定はありませんが、相続全体を1回で分配し、後日に未分割の遺産を残さないようにするのが、共同相続人にとって、実質的に公平な分割を図るという観点からは最も望ましい方法とされています。

しかし、一部の財産の調査や換価に時間がかかったり、特定の財産の分配について意見が一致しないとか、また、特定の遺産について遺産に属するかどうかについて争いがあり民事訴訟が係属しているような場合、一部の遺産について、早期にその帰属を確定する必要がある場合等、一部分割を行う必要性が認められる場合があります。

そこで、相続財産の一部分割が許されるとの直接の規定はありませんが、異説もない訳ではありません。

現在では下記の要件の下、相続財産の一部分割は法律上有効と解されています。判例上も一部分割が認められています。

(2)一部分割の効力と要件について

遺産分割協議(調停)においても、審判と同様民法906条の基準に従わなければなりませんが、相続人全員の自由意思に基づく任意の合意がある限り、法定相続分に合致しない分割協議も無効ではないと解されています。

したがって、一部分割であることが認識され、それが任意の合意に基づくのであれば、分割が法定相続分に一致していないとしても、意思表示に瑕疵あるいは錯誤などがない限り無効とはならないとされています。

第906条(遺産の分割の基準)
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
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裁判例
東京家裁昭和47年11月15日審判(家庭裁判月報25巻9号107頁)
相続税申告に際し、その存在が明らかであった遺産の一部につき、当事者間において分割協議がされた事案において、一部分割をするについて合理的理由があり、かつ民法906条所定の分割の基準に照らして遺産全体の総合的配分にそごを来たさず、残余財産の分配によって相続人間の公平をはかることが可能であるかぎり、当事者間に成立した一部分割を当然無効とする必要はないと解する。
高松高裁昭和50年12月10日決定(家庭裁判月報28巻9号50頁)
遺産の分割は、如何なる場合でも全遺産を一括して行わなければならないものではなく、遺産分割当時、一部の遺産の存在自体が相続人全員に知られていなかつた場合、その他相当の理由のある場合には、その一部の分割も許されると解すべきところ、本件原審判時においては、当該物件が遺産であることについて抗告人らから何らの主張もなされず証拠上も明確でなかつたことが認められ、また、他に本件分割の対象とされた遺産と一括して分割すべき強度の必要性も認められないから、当該物件を遺産に計上し一括して分割しなかつたからといつて原審判が違法となるものではない。
福岡家庭小倉支部昭和56年6月18日審判(家庭裁判月報34巻12号63頁)
遺産が数個存在するとき、その一部分の遺産分割協議も有効になし得るものと解されるが、その場合には相続人間において当該部分と残余部分とを明確に分離した上分割するとの合意が存在しなければならない。けだし、そうでなければ適正妥当な分割基準の実現に副わないからである。従って、この合意を欠く遺産分割の協議は不成立もしくは無効と解すべきである。
横浜家裁横須賀支部平成6年3月28日審判(判例タイムズ877号264頁)
遺産分割をするに当たり、一部の相続人について一部の遺産にかぎり分割することが合理的であり、また民法906条が定める分割の基準に照らして遺産全体の総合的な配分に齟齬をきたさず、残余財産の分配について相続人間の公平をはかることが可能であるときには、遺産分割の審判手続を分離することができると解すべきである。
残余財産の分割の方法

遺産の遺漏があっても、当初の遺産分割協議が有効である場合には、新たに判明した残余遺産についてのみ新たな遺産分割協議を行えば足りるということになります。

初の一部についての遺産分割が、法定相続分に従って分割されている場合には、残余遺産も基本的には法定相続分に従って分割されることになり、問題は生じにくいといえます。

しかし、先行する一部についての遺産分割が、法定相続分に従った分割ではない場合には、後の残余遺産の分割の際に、先行する一部についての遺産分割の結果を、どのように考慮すべきかの点について、以下のような2つの考え方があります。

このどちらの考え方に沿って、残余遺産をどのように分割するべきかに影響することになります。

(1)残余財産の分割の方法についての2つの考え方
(Aの考え方)
先に行われた一部分割の結果を考慮して全体として不均衡にならないように分割を行うべきであるとの考え方
下記のような特段の意思表示が認められない場合には、残余財産の分配において、遺産全体の総合的配分において公平が保てるよう、一部分割における不均衡を修正することになります。
東京家裁昭和47年11月15日審判は、相続税申告のため税理士に依頼して作成された遺産分割協議書につき、その一部分割の有効性を認め、本件では下記のような特段の意思表示が認められないとして、一部分割の対象となっていなかった残余遺産のみを分割の対象とするけれども、遺産全都の総合的配分において公平が保てるよう一部分割における各当事者の法定相続分との過不足を本件遺産分割において修正すべきものとしています。
かかる見地から、上記審判例では遺産の価額の計算を以下のとおりとしています。
「遺産の公平な総合的配分のためには既に一部分割された遺産も分割時において存在するものとして、遺産の総額を評価し、それに各当事者の法定相続分を乗じて具体的相続分を算定し、さらに一部分割により各当事者の取得した遺産の評価額を算定して、具体的相続分と一部分割による取得分との過不足を算出しなければならない。」としています。
(Bの考え方)
先に行われた一部分割の結果を考慮せず、残余財産につき分割を行うべきであるとの考え方
自己の法定相続分よりも少ない財産を取得した相続人の意思が、不足部分について、持分放棄あるいは譲渡の意思であった場合のような特段の意思表示のあるときは、Bの考え方によることを承認したものとみられ、残余遺産の分割において、先に行われた一部分割の結果を考慮せず、残余財産につき分割を行うことになるとされています。
(2)当初から遺産の一部分割であることが明らかな場合に、協議による一部分割をする場合の注意点

協議による一部分割をする場合には、残りの遺産につき分割協議が成立せず、遺産分割調停又は審判になることがありうることを想定し、調停又は審判では前に行われた一部分割の協議の成立又は効力の有無や、一部分割と残りの遺産の分割との関係についての協議の解釈をめぐって争いとなることのあるのであるから、一部分割の協議書を作成し、一部分割と残りの遺産の分割との関係をその協議書に明確に記載するべきとされています。

すなわち、一部分割と残りの遺産の分割との関係につき、一部分割の結果を考慮せず、残りの遺産につき合意した割合又は具体的相続分により分割するのか(基本Bの考え方)、また、一部分割の結果を考慮して全部の遺産につき具体的相続分により分割することができるように残りの遺産を分割するのか(基本Aの考え方)を明確に記載すべきであるとされています。

さらに、残りの遺産をより簡易に分割するためには一部分割の結果をも考慮せず、かつ残りの分割の割合を明確にしておくことが望ましいとされています。

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