遺産相続 遺留分・遺留分減殺請求権

遺留分・遺留分減殺請求権

遺留分とは
  •  遺留分制度とは、一定の相続人(兄弟姉妹を除く多くの相続人)について、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の承継を保障する制度です。
     例えば、あなたのお父さんが被相続人(死亡された本人。相続される人という意味です。)であり、あなたは、被相続人の3人の子のうちの一人であったとします。既にお母さんは亡くなっています。あなたは3人兄弟の三男でしたが、亡きお父さんは財産のすべてを長男に相続させる旨の遺言を残していたとします。そうすると、遺言どおりになるはずだから、あなたはお父さんの残した財産について、何の財産も相続することはできないのでしょうか?そうではありません。
  • 関係図

あなたには、法定相続分(民法900条で定められている相続人ごとの相続分)である3分の1のさらに2分の1、すなわち全体の6分の1については、たとえ遺言に長男にすべての財産を相続させる旨記載されていたとしても、遺留分として財産を取得する権利が定められているのです。

それでは、上記のような例において、あなたはどのようにして遺留分である相続財産の6分の1を取得することになるのでしょうか?また、遺留分を主張される長男としては、どのような反論ができるでしょうか?以下では、遺留分減殺請求権について概要をご説明します。

遺留分減殺請求権とは

先ほど述べたように、一定の相続人(兄弟姉妹を除く多くの相続人)には、遺留分が保障されており、被相続人がそれを侵害して、贈与や遺贈を行った場合に(先述の例ではお父さんが遺言によりすべての財産を長男に相続させることとした)、受遺者や受贈者等に対して(先述の例では長男に対して)、その処分行為の効力を奪うことを内容とする相続人の権利(先述の例では、長男に対して三男が相続財産のうちの6分の1は私にも権利があるのでそれに相当する財産を取得させるように請求する権利)を遺留分減殺請求権といいます。

遺留分減殺請求権の行使について
  1. (1)遺留分減殺請求権を行使できる者
    遺留分減殺請求権を行使できるのは、兄弟姉妹及びその代襲者を除く相続人である。
    なお、遺留分権利者の相続人、包括受遺者、相続分の譲受人など包括承継人はもちろん、特定承継人(具体的な特定の遺贈に対する遺留分減殺請求権を譲り受けた者)も、遺留分減殺請求権を行使することができます。
  2. (2)遺留分減殺請求の相手方
    遺留分減殺請求の相手方は、減殺の対象となる遺贈を受けた者、贈与を受けた者、もしくはそれらの者の相続人等の包括承継人です。
    例外的に受遺者から目的財産を譲り受けた者(特定承継人)が、譲り受けの時において、遺留分権利者に損害を与えることを知っていたときは、相手方となります。
  3. (3)遺留分減殺請求権の行使方法
    意思表示をすればよく、必ずしも裁判をする必要はありません。
    実務的には、配達証明付きの内容証明郵便で意思表示をすることがほとんどです。
遺留分減殺請求権の行使期間

これまでの説明でおわかりかもしれませんが、遺留分減殺請求権はあくまで権利であるため、権利を持っている者が行使をしなければ、遺留分を侵害した遺贈や贈与もそのまま効果を有することになります(先述の例でいえば、三男と次男が長男に対して遺留分減殺請求権を行使しなければ、長男が遺言の通りすべての財産を相続することになります)。

そして、最も注意しなければならないといっても過言でないのは、遺留分減殺請求権を行使するまでの期間についてです。

遺留分減殺請求の効果

遺留分減殺請求権が行使されると(意思表示がなされると)、その意思表示の到達によって効果が発生します。

そして、その効果は、遺留分を侵害する贈与や遺贈が、遺留分を侵害する限度で効力を失い、贈与や遺贈が未履行のときは履行義務が消滅し、既に履行済みの場合は、履行済みの財産の返還を請求することができるようになります。

例えば、先述の例で、お父さんの残した遺産に自宅不動産が含まれていて、遺言により長男の名義に変えられたとしても、三男が長男に遺留分減殺請求の意思表示をした時点で、当該不動産は共有ということになります。

減殺請求の相手方は、現物を返還するのが原則ですが、価額で弁償することも許されます。

遺留分の算定方法
遺留分の算定方法
■基本算定方法 基本算定方法
相続開始時の
積極的財産
被相続人が相続開始時に有していた財産は、条件付権利及び存続期間の不確定な権利であっても、遺留分の計算の基礎とされます。条件付権利等の価額は、家庭裁判所の選定した鑑定人の評価に従って定められることになります。
債務の控除
遺留分算定の基礎となる財産額を算定する際には、相続財産から被相続人の債務は控除されます。
加算される贈与
加算される贈与の限定
民法第1030条前段において定められているように、被相続人が生前贈与をしている場合、生前贈与された財産のうち、相続開始前1年以内に贈与されたものだけが遺留分減殺請求の対象となるのが原則です。
しかし、民法第1030条後段において定められている通り、被相続人と受贈者の両方が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、相続開始前1年以内に限らず、遺留分減殺請求の対象となります。

※ 遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与
遺留分権利者に損害を加えることを知ってされた贈与とは、遺留分を侵害する認識があればよく、損害を与えるという加害の意図や誰が遺留分権利者であるか知っている必要はないと解釈されています。

また、受贈者が相続人であり、当該贈与が特別受益にあたる場合には、相続開始時から1年前の贈与かどうかを問わず、遺留分減殺請求の対象となると解されています(最高裁平成10年3月24日判決参照)。

※ 相続開始前に1年間にされた贈与
1年以内というのは、贈与契約が履行された時ではなく、贈与契約締結時を基準として考えるとされています。

※ 不相当に低額な対価でなされた有償処分
不相当に低額な対価でなされた有償処分についても、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った場合、相当な対価から不相当に低額な対価を差引いた金額の贈与があったとして評価されます。

遺留分の割合(遺留分率)
  • 総体的遺留分
    【直系尊属のみが相続人である場合】
    被相続人の財産の3分の1が遺留分である
    民法1028条1号
    【それ以外の場合】
    被相続人の財産の2分の1が遺留分である
    民法1028条2号
    例えば・直系卑属(子)のみの場合
       ・直系卑属(子)と配偶者の場合
       ・(父や母)と配偶者の場合
       ・配偶者のみの場合
  • 個別的遺留分 個別的遺留分とは、相対的遺留分の割合に法定相続分の割合を乗じたものである。 個別的遺留分
例)1
  • 相続人が、被相続人の父母の2人だけであるとして、被相続人が相続人ではない第三者に対して、全ての財産を遺贈した場合に、父母の遺留分はそれぞれ遺産全体の何分の1でしょうか? 父の遺留分 母の遺留分
  • 個別的遺留分
例)2
  • 相続人が、被相続人の配偶者と子2人であるとして、被相続人が相続人ではない第三者に対して、全ての財産を遺贈した場合に、配偶者と子2人は、遺留分としてそれぞれ遺産全体の何分の1を主張できるでしょうか? 父の遺留分 母の遺留分
  • 個別的遺留分
遺留分減殺請求を巡る紛争の解決手続について

遺留分減殺請求を巡る紛争の解決手続について

遺留分に関する争いについては、調停前置主義といって、いきなり訴訟手続を行うことはできず、まずは家庭裁判所において調停をしなければなりません(家事審判法18条1項)。

もっとも、家庭裁判所における調停が不成立の場合には、審判による解決ではなく、民事訴訟で解決することになります(家事審判法26条)。

遺留分減殺請求権と価額弁償
1.現物返還に代わる価格弁償(減殺請求を受けた受贈者等からの価格弁償)
 民法1041条1項において定められている通り、受贈者及び受遺者は、贈与又は遺贈の目的価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができます。
【価格弁償が認められるための要件】
 履行又は履行の提供
最高裁の判例によれば、受遺者が現物返還の義務を免れるには、価額の弁償をする旨の意思表示をするだけでは足りず、価額の弁償を現実に履行するか、あるいは価額弁償のための履行の提供をする必要があるとされています(最高裁判所昭和54年7月10日判決参照)。
そして、遺留分減殺請求を受けた受贈者または受遺者からは、遺留分減殺の対象とされた贈与又は遺贈の目的である財産ごとに、価額弁償をすることができると解されています(最高裁判所平成12年7年11日判決)。
【価額弁償がなされるときの目的物の価額算定の基準時】
 遺留分減殺請求を受けたものが、弁償すべき価額の算定基準時は、現実に弁償がなされる時です。当該基準時の評価額により算定することになります。
訴訟において価格弁償をする際には、弁償すべき価額の算定基準時は、事実審の口頭弁論終結の時になります。
【価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日】
 価額弁償請求に対する遅延損害金の起算日は、遺産分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し、かつ、受遺者に対し弁償金の支払いを請求した翌日とされています(最高裁判所平成20年1月24日判決)。
2.現物返還
 例えば、遺贈につき遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合、遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し、受遺者が取得した権利はその限度で当然に(物権的に)減殺請求権を行使した遺留分権利者に帰属することになります。この物権的に戻った権利は、遺産分割を予定しない共有持分であり、共有状態を解消するためには共有物分割手続によることになります。

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