営業秘密保護・知的財産 著作物の範囲

著作権の対象となる「著作物」の範囲とは

1.定義

「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法2条1項1号)と定義されています。

①「思想又は感情の表現であること」
ア 特許権との違い
 特許権の対象となる発明は、発明者の人格とは離れた客観的なものである(第三者による再現が可能)一方、著作権の対象となる著作物は、創作者にしかできない表現である主観的なものであると理解されています。
 例えば、エジソンが白熱電球の発明に成功しなかったとしても、後に他の誰かによって発明された可能性が高いと考えられます。しかし、ディズニーがミッキーマウスというキャラクターを作らなければ、全く同じキャラクターを後に誰かが作った可能性は極めて低いと考えられます。
 このように、著作権法は、創作者にしかできない表現である主観的なものを保護するものであり、著作物は「思想又は感情の表現であること」が要件であるとされているのです。
イ 「事実を保護することの弊害」と「思想又は感情の表現の保護」
 「事実の表現」と「思想又は感情の表現」は区別され、「事実の表現」は著作物として、著作権の保護対象となりません。
 例えば、「2014年にサッカーのワールドカップがブラジルで開催された」とか、「日本の民法においては、口頭でも契約が成立しうる」といった事実を文章で表現したからといって、著作権法上、著作物として保護の対象とはなりません。
 なぜなら、このような文章を著作権法上保護すると、弊害(具体的には、学問の自由、表現の自由への悪影響)が大きいからです。
②「創作性」
著作物と認められるためには、一定の創作性が必要とされています。この「創作性」とは、特許の進歩性や意匠の創作非容易性のような「高度の創作性」が必要とされているものではなく、著作者の個性が何らかの形で表現されていれば足りるとされています。
例えば、休刊または廃刊となった雑誌の最終号に掲載された「挨拶文の著作物性」が問題となった事案について、「本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。」「他方、右七点を除くその他の本件記事については、執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され、著作物であると認められる。」と判示した裁判例(東京地判平成7年12月18日。ラストメッセージ in 最終号事件)があります。
③「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること」
著作物の定義のうち、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること」という部分の意義は、実用品あるいは工業製品を著作物から排除するためにあると理解されています。
技術的思想が具体的に表現された機械や工業デザインも著作権法によって保護されるわけではない、すなわち実用新案法や意匠法等で保護されるものであることを明らかにするためのものであるということです。
2.著作権法10条の「著作物の例示」

著作権法には、上記で記載した通り、著作権法第2条1項1号において、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」という定義規定が置かれています。

しかし、著作権法は、「著作物」の定義規定を置くだけでなく、著作権法10条において、著作物を具体的に例示しております。

もっとも、著作権法10条の明文上明らかなように、あくまでこれは例示であり、例示されているもの以外の「著作物」も存在しうるということになります。

そうはいっても、著作権法10条を見ることで、「著作物」の具体的なイメージを持つことができますし、立法時に想定できる著作物をほぼ網羅していると考えられ、何といっても、現実に裁判所が著作権法10条の例示以外の著作物を認める可能性は高くないので、とても参考になると思いますので、以下、掲載します。

【著作権法10条】
  1. <1号>  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  2. <2号>  音楽の著作物
  3. <3号>  舞踊又は無言劇の著作物
  4. <4号>  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  5. <5号>  建築の著作物
  6. <6号>  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  7. <7号>  映画の著作物
  8. <8号>  写真の著作物
  9. <9号>  プログラムの著作物

これらの著作物以外にも以下のようなものも著作物として認められています。

二次的著作物上記の著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案(映画化など)したもの
編集著作物百科事典、辞書、新聞、雑誌など
データベースの著作物上記の編集著作物のうち、データベースの形式となっており検索できるもの

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