営業秘密保護・知的財産 意匠権の効力

意匠権の効力

意匠権は設定の登録によって発生するとされていますが(20条1項)、具体的にどのような効力があるのでしょうか。

意匠権の効力の具体的内容、どのような場合に消滅するかなどについて解説します。

独占的効力

意匠権者は、業として登録意匠およびこれに類似する意匠の実施をする権利を専有するとされています(23条本文)。

これを、意匠権の独占的効力(専用権)といいます。

「業として」とは、事業としてという意味です。

したがって、事業にはあたらない、個人的または家庭内での実施にまでは効力が及びません。

意匠権は、特許権などとは異なり、登録意匠だけでなくそれに類似する意匠にも効力が及びます。

これは、登録意匠と同一のものだけに意匠権の効力が及ぶとすると、効力の及ぶ範囲が狭くなりすぎ、実質的に意匠を保護することができないと考えられるからです。

登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされています(24条2項)。

実施とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、もしくは輸入し、またはその譲渡もしくは貸渡しの申出(譲渡または貸渡しのための展示を含む)をする行為をいいます(2条3項)。

専有とは、独占的に権利を有することをいいます。

排他的効力

意匠権者は、自己の意匠権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができます(37条1項)。

これを意匠権の排他的効力といいます。

また、業として、登録意匠またはこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等もしくは輸入又は譲渡等の申出をする行為は意匠権の侵害とみなすとされています(38条1号)。

特殊な意匠の効力
⑴ 部分意匠(2条1項ただし書き)

部分意匠制度は、物品全体としては模倣とはいえないが、特徴的、独創的な部分の意匠の模倣を禁止して意匠権を保護するために設けられた制度です。

したがって、部分意匠の意匠権の効力は、同一または類似の部分意匠を含む完成品に及ぶものと考えられます。

⑵ 組物の意匠(8条)

組物の意匠は、一つの組物全体に一つの意匠権を与えるものです。

したがって、組物の意匠の意匠権は、組物全体として同一または類似の意匠に及ぶものであり、組物を構成する個別の物品には効力が及びません。

⑶ 関連意匠(10条)

関連意匠の意匠権も、本意匠の意匠権と同様、独自の効力を有します。

ただし、関連意匠の意匠権の存続期間は本意匠の設定登録の日から20年をもって終了すること(21条2項)、本意匠と関連意匠は分離して移転することができない(22条1項)など、一定の従属性があります。

⑷ 秘密意匠(14条)

秘密意匠の場合、意匠公報で願書や添付図面等の登録意匠の内容が掲載されません。

そのため、意匠権者以外の者が、秘密意匠の設定登録があることを知らずに、秘密意匠と同一または類似の意匠を実施する可能性があります。

そこで、秘密意匠の侵害の場合は、侵害行為について過失が推定されないことになっています(40条ただし書き)。

また、差し止め請求を行うには、先に所定の警告をしなければなりません(37条3項)。

効力の制限
⑴ 他人の登録意匠等との関係による制限

ある意匠権の客体である物が、他人の意匠権、特許権などの権利の客体である物を利用するものである場合があります。

また、一つの物のうえに、意匠権と他人の特許権などの権利が重なり合う場合があります。

このような場合には、意匠権と他人の権利との調整が必要になります。

そこで、意匠法26条1項、2項が、このような場合の調整を規定しています。

26条
意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない。
2 意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠に類似する意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠若しくはこれに類似する意匠、特許発明若しくは登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権、特許権、実用新案権若しくは商標権若しくはその意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠に類似する意匠の実施をすることができない。

1項は登録意匠の利用抵触について、2項は登録意匠に類似する意匠の利用抵触についての規定です。

いずれも先願優位の原則により、後で出願した意匠権者は、業として意匠を実施することはできないとされています。

ここでいう「利用」とは、意匠を実施すると必然的に他の意匠等を実施する関係にある場合をいいます。

利用関係の具体例としては、他人のハンドルの意匠と、そのハンドルを用いた自転車の意匠などがあげられます。

また、「抵触」とは、一方の権利と他方の権利が重なり合うことをいいます。

26条1項、2項に該当する場合に業として意匠を実施したいときは、権利者の許可を得る必要があります。

後願の意匠権者は、先願の権利者に対し、意匠を実施するための通常実施権の許諾について協議を求めることができ(33条1項)、協議が成立せず、または協議ができないときは、特許庁長官に裁定を請求することができます(33条3項)。

ただし、商標権、著作権との抵触については裁定請求をすることができません。

⑵ 実施権による制限
① 専有実施権
意匠権者は、その意匠権について専用実施権を設定することができます(27条1項)。
専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録意匠またはこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します(27条2項)。
したがって、設定行為で定めた期間・地域・内容の範囲内では、意匠権者であっても意匠を実施することはできなくなります。
② 通常実施権
実施権には、専有実施権のほかに通常実施権があります。
専有実施権と違って独占的な権利ではなく、意匠を実施することができる権利にすぎません。
通常実施権者がいる場合、意匠権者は意匠の実施を独占することはできなくなるので、意匠権の効力が制限される場合の一つと位置付けることができます。
通常実施権には、許諾による通常実施権(28条1項、2項)のほか、法定通常実施権、⑴で解説した裁定通常実施権(33条)があります。
法定通常実施権とは、一定の要件を満たした場合に法律の定めに従って通常実施権が与えられるものをいいます。
法定通常実施権には、次のようなものがあります。
  • ・職務創作による通常実施権(15条3項、特許法35条)
  • ・先使用による通常実施権(29条)
  • ・先出願による通常実施権(29条の2)
  • ・意匠権の移転の登録前の実施による通常実施権(29条の3)
  • ・無効審判の請求登録前の実施による通常実施権(30条)
  • ・意匠権等の存続期間満了後の通常実施権(31条、32条)
  • ・最新により回復した意匠についての通常実施権(56条)
⑶ 公益上の理由等による制限

意匠法36条が特許法69条1項、2項を準用していることから、次の場合には意匠権の効力は及びません。

  • ・試験または研究のためにする登録意匠の実施
  • ・単に日本国内を通過するに過ぎない船舶もしくは航空機またはこれらに使用する機械、器具、装置その他の物
  • ・意匠登録出願の時から日本国内にある物

産業の発達や国際交通の便宜を図るという公益上の理由や、意匠登録出願の時にすでに存在した物にまで効力が及ぶとすることは所有者に酷であるという理由から、これらの場合には意匠権の効力が及ばないとされているのです。

意匠権の消滅事由

意匠権は、次の場合に消滅します。

  • ・存続期間(設定登録の日から20年)が満了したとき(21条)
  • ・相続人がないとき(36条、特許法76条)
  • ・意匠権者が放棄したとき(36条、特許法97条1項)
  • ・意匠権者が登録料を納付しないとき(44条3項)

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