不動産取引 時効取得

不動産の時効取得

不動産の時効取得とは、土地や建物を長期間占有している者が、その所有権を取得する制度です。といっても、賃貸物件に長いこと住んでいたからといって所有者になれるわけではありません。では、どのような場合に不動産の時効取得が成立するのでしょうか??

このページを読まれている方々の多くは、「不動産の時効取得なんて本当にありうることなのだろうか?」「ありうるとしたらどのような場合なのだろうか?」という疑問を持たれているのではないでしょうか??

しかし、弁護士という仕事をしていると、不動産の時効取得が問題になる事件を依頼されることはめずらしいことではありません。

このページを読まれている方で、以下に記載する不動産時効取得の要件にあてはまるのではと心当たりがある方は、その事例の所有権に関する問題を時効取得によって解決できるかもしれません。

そのような場合には、ぜひ当法律事務所の弁護士にご相談ください。

所有権の時効取得が問題となる場面

所有権の時効取得が問題となる場面として以下のような例があります。

  • ◇「売買」によって土地を購入したが、売主は実際には所有者ではなかった場合。買主が10年もしくは20年当該土地を占有し続ければ、時効取得が問題となります。
  • ◇「亡父が購入した土地があり、長い間占有しているが、購入時にどういうわけか登記名義人を変更しておらず、登記のために必要な売買契約書等の書類がない」場合、本来であれば亡父の「売買」を証明して移転登記を求めるべきでしょうが、時効取得を原因として所有権移転登記を求めるほうが容易な場合があります。
  • ◇「隣地との境界線を越えて塀を作ってしまい、20年以上もたってそのことが判明したため、紛争となった場合」には、時効取得が問題となります。
時効取得の要件
占有について

時効取得は、占有が一定期間継続した場合に権利の取得を認める制度ですから、不動産の時効取得を主張する者は、20年間(民法162条1項)または10年間(同条2項)、不動産の占有を継続したことを立証しなければなりません。

しかし、占有が継続したことを立証するのは極めて困難です。

そこで、民法186条2項は、「前後の両時点において占有をした証拠」があれば、占有はその間継続したものと推定しています。

この規定によると、例えば、平成20年1月1日から平成30年1月1日までの10年間、不動産を占有したことによる時効取得を主張する場合には、平成20年1月1日の時点で占有していたことと平成30年1月1日の時点で占有していたことを立証すれば、10年間占有したことが推定されます。

そのため、平成20年1月1日から平成30年1月1日までの間に占有が継続していなかったこと(途中のどこかの時点で占有を喪失したこと)については、取得時効の完成を争う相手方が立証する必要があります。

前後の両時点においてある土地を占有していたことを立証する具体的方法としては、例えば、10年前の時点で土地上に自己名義の建物が建っていたことを裏付ける写真や本人・第三者(付近住民等)の陳述書が考えられます。土地上に自己名義の建物を有している人は、それだけで建物の敷地部分となっている土地を占有していることになるからです(建物所有による土地占有)。建物を所有していたことは、登記簿謄本によって証明することになります。

他には、土地上で作物を耕作していたことが分かる写真や陳述書も考えられます。

「所有の意思をもって」

 「所有の意思をもって」の要件は、時効取得する占有者が所有者と同様の排他的支配を事実上行おうとする意思を持っていること(いわゆる「自主占有」であること)をいいます。

この所有の意思については、民法186条1項によって推定されます。

そのため、取得時効の成立を主張する者は、所有の意思をもって占有していたことを立証する必要はなく、取得時効の成立を争う者において、当該占有者に所有の意思がなかったことを立証しなければなりません。

この「所有の意思をもって」の要件は、占有者の主観的な内心の意図を基準に判断すると誤解されがちですが、占有を取得するに至った原因(権限の性質)や占有中の事情を考慮して客観的に判断されます。

したがって、取得時効の成立を争う者は、①取得時効を主張する者が、賃借権等のその性質上所有の意思が認められない権限に基づいて占有開始したこと(他主占有権原)、または、②所有の意思がないと評価される占有に関する事情(他主占有事情)を主張立証することによって、取得時効の完成を妨げることができます。

例えば、①に関しては、賃借人(所有者から物を借りている人)や受寄者(所有者から物を預かっている人)は、いずれ所有者に占有している物を返還しなければなりませんから、その占有には所有の意思が認められません。

また、②の他主占有事情とは、具体的には、所有者であれば取らないような行動をとっていることや所有者であれば当然取るべき行動に出なかったことをいいます。

典型例としては、占有している不動産について、登記簿上の所有者に対して自己への所有権移転登記を求めなかったことや、固定資産税の支払を負担してこなかったことが挙げられます。

なぜ、固定資産税の支払を負担してこなかったことが他主占有事情になるかといいますと、固定資産税は登記上の所有者に課せられる公的負担であるところ、例えば占有者が、固定資産税の原資となる金銭を登記上の所有者に渡すことは、通常、所有の意思がなければとらない行動ですから、自主占有だったことを推認させますし、逆に固定資産税の支払に充てるための金銭を所有者に渡してこなかった場合には、所有者であれば当然とるべき行動に出ていないと評価されるからです。

もっとも、登記上の所有者でなければ固定資産税は課せられませんし、経済的負担を嫌がって納税しない場合もありますから、固定資産税を支払っていないからといって直ちに自主占有が否定されるというわけではありません。

裁判例でも固定資産税支払いの事実は、自主占有だったか否かを判断するための一つの要素とされており、常に決定的な事情とはされていません。

「平穏」かつ「公然」

占有が「平穏」かつ「公然」であることも取得時効成立の要件とされています(民法162条)。

もっとも、「平穏」及び「公然」も民法186条1項によって推定されますから、取得時効の成立を主張する者において、自らの占有が「平穏」かつ「公然」であったことを立証する必要はありません。

取得時効の成立を争う者において、占有が「平穏」でなかったこと、または、「公然」でなかったことを立証することになります。

具体的には、暴行または強迫によって占有を開始・保持したことや、当該占有が隠匿してなされたことを立証できれば、取得時効の成立を妨げることができます。

「善意」かつ「無過失」と「時効期間の経過」
  • 【善意かつ無過失】→10年間の経過
  • 【それ以外】→20年間の経過

「善意」かつ「無過失」とは、占有者が占有している不動産が、自分の不動産であると信じており、かつ自分の不動産であると信じることについて過失がないことをいいます。

このうち、「善意」については民法186条によって推定される一方、「無過失」は推定されません。ゆえに、10年間の短期時効取得を主張する者は、自らが無過失であることを証明しなければなりません(この「無過失」である必要があるのは、占有開始時点です)。

実務的には、この「無過失」と言えるか否かが争いになることが多いです。

時効取得に基づいて登記名義を変更するためには

あなたがある土地の所有権を時効取得により取得したとします。しかし、その土地の所有者として登記されているAさんからあなたは所有権移転登記をしてもらいたいとします。

この場合、AさんがAさんの意思で所有権移転登記に応じてくれれば移転登記をすることは可能です。しかし、Aさんが移転登記をすることを拒んだ場合、あなたはAさんを相手に裁判を起こさなければなりません。

具体的には、「所有権に基づく移転登記手続請求」という裁判を起こし、その裁判の中で、あなたがその土地を時効取得したこと(上記の時効取得の要件を満たしたこと)を証明しなければなりません。

その証明ができたと裁判所が認めてくれれば、判決において所有権移転登記が命じられ、あなたは登記簿上も所有者となることができるということになります。

時効取得の特殊事例
共同占有による複数人による時効取得

複数人が、ある不動産を共同占有して取得時効の要件を満たした場合、共同占有者全員について取得時効が完成し、当該不動産は共有となります。

したがって、登記上の所有者に対して登記移転を求める場合には、共同占有者各々の単独名義ではなく共同占有者全員の共有名義への変更を求めることになります。

相続した共有不動産の時効取得

被相続人が所有していた不動産を複数の相続人が相続した場合、当該不動産は遺産分割成立まで共同相続人の共有となります。

では、共同相続人のうちの1人が相続した不動産を単独占有している場合、時効取得が成立するのでしょうか?

時効取得が成立するためには自主占有している必要がありますが、共同相続人は各自、相続不動産について持分という割合的な所有権を有しています。

そのため、不動産を占有している相続人は、自分の持分を超える部分については他の共同相続人が所有権を有していることを認識していますから、不動産全体について所有の意思があったとは認められません。

したがって、共同相続人の1人が相続不動産を単独占有して取得時効が完成したとしても、自己の持分の限度で取得時効を援用できるにとどまります。

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