不動産取引 占有移転禁止の仮処分

占有移転禁止の仮処分

建物明渡しの強制執行は、その物件の占有者(必ずしも賃借人とは限りません)に対して行う必要があります。

これを逆からいえば、賃借人を相手に訴訟をして勝訴判決を得ても、賃借人とは別人が占有していて、強制執行ができないおそれがあるのです。

しかも、この占有者の判断は、口頭弁論終結時(判決の前の期日であることが多いです。)を基準として行われるため、訴訟提起時点の占有者に対して勝訴判決を得ても、訴訟中に他の人に占有を移転されてしまうと、これもまた強制執行ができなくなります。

ではかかる事態を避けるためにはどのような方法があるでしょうか。

それが占有移転禁止の仮処分という手続きです。

占有移転禁止の仮処分とは

占有移転禁止の仮処分は、紛争の対象となっている係争物の占有者を債務者として、その債務者の占有の変更を暫定的に禁止するもので、特定物の占有状態の現状維持を目的とします。

すなわち、占有移転禁止の仮処分は、さきほどのように強制執行ができなく事態を回避するため、訴訟の相手方とすべき占有者をあらかじめ固定し、その後に他者に占有が移転されても仮処分の執行時点の占有者に対する勝訴判決で、その者から占有を取得した他の者らに対しても強制執行を可能とするための手続です。

占有移転禁止の仮処分をするには

仮処分債権者は、保全の申立てをするには、被保全権利と保全の必要性を明らかにする必要があります(民事保全法13条、23条)。

占有移転禁止の仮処分の被保全権利としては、物権的、債権的な物の引渡し・明渡請求権であれは足りるとされています。

所有権、占有権、賃借権等に基づく建物明渡請求等が考えられます。

占有移転禁止の仮処分の流れ

占有移転禁止の仮処分の手続は、占有移転禁止の仮処分命令を取得する裁判手続と、それを執行する手続を経て行います。

大まかな手続きの流れは以下のようになります。

占有移転禁止の仮処分命令を取得する裁判手続
① 占有移転禁止の仮処分命令の申立
先ほどの被保全権利と保全の必要性を明らかにして申立てをする必要があります。
② 債権者審尋
裁判官との面接のようなものです。裁判所によっては省略される場合もあります。
③ 裁判所による担保決定
担保の納付(供託)
④ 裁判所による占有移転禁止の仮処分命令の発令
保全執行の申立・予納金納付

執行官による保全執行(実際に執行官とともに賃貸物件へ。場合によっては執行補助者や鍵屋さんの手配)(執行日には、執行官により,目的物の現況、占有状況等の把握、債務者の特定がなされ、「債務者が目的物の占有の移転等を禁止されていること」及び「執行官が目的物を保管していること(ただし、債務者に目的物の使用を許すこと)」の公示がなされます。

費用等

申立て時に、執行官手数料等の費用として3万円程度の予納。これは債務者や物件の数によって増加することがあります(実際の予納金等を含め、費用は各地方裁判所にある執行官室に確認して下さい)。

この他に実費として、目的物件に立ち入るために合鍵等がなかった場合、解錠技術者の費用として数万円程度かかることがあります。金額は業者により異なります。

このように、占有移転禁止の仮処分は明渡をする上で、非常に有用な手続ですが、保全の申立書の記載を始め,裁判官との面接や、執行の際の執行官との打ち合わせ、鍵屋さんの手配などが必要となります。

また、保全執行は、保全命令の決定正本が送達されてから2週間内に行う必要がある(民事保全法43条2項)など、迅速性が求められています。

弁護士に依頼すれば、これらの手続を全て行いますので、お気軽にご相談いただければと思います。

占有移転禁止の仮処分をして占有者を固定(恒定)して解決した事例
事例①

建物の所有者兼賃貸人である依頼者であるXが、甲と間で事業用建物賃貸借契約を締結し,甲は当該建物を飲食店として利用し、店舗(以下,「本件建物」といいます。)を営んでいました。

ところが、甲が賃料を滞納したことから、賃貸人Xは,賃借人甲との間の上記賃貸借契約を解除して、賃借人甲を相手方とする本件建物の明渡訴訟を提起して勝訴判決(欠席判決)を得て,その確定後,同確定判決に基づいて甲を相手に本件建物の明け渡しの強制執行の申立てをして、強制執行に着手しました。

ところが,その執行の着手日に甲は立会わず、その長兄乙が立会い,本件建物(飲食店)は賃借人甲の弟丙が経営して、甲と丙との間には賃貸借契約(転貸借)が存在している旨執行官に陳述しました。

そこで、執行官は、丙にも本件店舗の占有があり,賃借人甲が本件店舗を占有しているか否かは不明であるとした上で,本判決の債務名義人は甲だけであるから、本件判決では執行できないとしました。

解決事例

そこで、本件建物の明渡訴訟を提起する前、Xは、丙を相手として占有移転禁止の仮処分をして、占有者を丙に固定(恒定)しました。

その上で依頼者Xは、丙を相手として本件建物(飲食店)の明渡しの訴訟を提起し、その占有者丙との間で本件建物明渡しの勝訴判決を得ました。

丙から控訴の申立てがなされ、控訴審で、訴訟上の和解が成立しましたが、その内容は「丙は、Xに対し、本件建物について、丙が権原なく占用していることを認めた上で、5か月未満の明渡し猶予期間経過後には本件建物を明渡し,その猶予期間中は賃料相当損害金を支払うこと」等を骨子とするもので、全面勝訴に近い訴訟上の和解をして解決しました。

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