不動産取引 借地借家法と定期借地契約・定期借家契約

借地借家法と定期借地契約・定期借家契約

土地や建物の賃貸借契約を締結するとき、その契約書には「契約期間」が設けられていると思います。

建物に関して、例えば、一般的な賃貸マンションや貸家などの場合は2年契約が多いようですが、これは、2年ほど経てば転勤や転職といった仕事の事情や家族構成など、賃貸借契約を締結した時点と生活環境が変わることが予測されることから、便宜上「2年」と定めているものです。

建物の賃貸借契約を締結する際に留意しなければならない借地借家法で定められている通常の借家契約(普通借家契約)の契約期間は「1年以上、上限はなし」となっていますので、契約期間は5年でも10年でも30年でも構いません。

ただし、契約期間を1年未満で定めた場合は無効となり、「期間の定めがない契約」とみなされます。

また、土地に関していえば、同じく普通借地契約の契約期間は「30年以上」と定められていますので、こちらも契約期間は50年でも100年でも構わないということになりますが、30年を下回る契約は無効ですので、20年とした場合には、自動的に契約期間は30年ということになります。

では、土地や建物の賃貸借契約書に定められた契約期間が満了すれば、その賃貸借契約が終了し、借主はそこを明け渡して退去しなくてはならないのかといえば、そうではありません。

借主がこの賃貸借契約の更新を望めば、貸主は正当事由なしにそれを拒むことはできないのです。

「自分が住みたいから」「自分が使いたいから」というだけでは正当事由はみとめられません。

つまり、貸主は、一度賃貸に出してしまうと、賃貸借契約書記載の契約期間が満了しても、貸主の事情だけではそれをやめるということはできないということになります。

ですので、例えば、マンションを持っているけれど、転勤になったから戻ってくるまでの間2年とかの期間で賃貸に出して、また戻ってきたら自分たちで住みたいというようなケースも多いかと思いますが、一度賃貸に出してしまうと、借主が契約の更新を望む以上、転勤から戻ってきたからという理由だけでは、借主に「出ていけ」とは言えないのです。

これは、借主を保護する目的で平成4年8月1日に施行された借地借家法の定めによるものです。

借主の方から「次の契約満了時に更新はしない。」と申し出てくれれば問題はないのですが、その申し出がなく、貸主からも異議を唱えないと、その契約は自動的に法定更新され、半永久的に続いてしまうという事態にもなりかねません。

具体的には、①期間満了6か月前までに更新拒絶の通知を送る、②正当事由が認められることが必要です。

①については、さほど争いになることはありませんが、問題は②の正当事由について、どのように判断されるかです。

貸主が借主に対して更新を拒絶する(立ち退いてもらう)ためには、正当事由が認められることが必要となりますが、以下のものが正当事由の有無を判断する要素として考慮されます。

  • (1) 貸主と借主の双方が、賃貸借の目的である土地や建物を必要とする事情
    更新を拒絶したい貸主が、その土地や建物を自ら使用する必要性がどの程度あるのか、もしくは、借主が他に使用する土地や建物があるかどうかなど、双方のどちらがよりその土地や建物の使用を必要としているか。
  • (2) 賃貸借に関する従前の経緯や経過等
    契約時や入居中の状況(用途違反の有無がないかなど)、賃料の支払い状況(賃料の延滞や未払いがないかなど)、契約上の義務の履行や権利金、契約更新料等の金銭の授受の有無及びその金額など、賃貸借に関する従前の経緯や経過等の事情。
  • (3) 建物の利用状況
    借主がその建物をどのような状況で利用しているか。
  • (4) 建物の現況
    建物の老朽化により大規模な修繕あるいは建て替えの必要が差し迫っていることや、建物敷地を利用する権利の喪失によって建物の利用が困難になる事情など。
  • (5) 上記(1)~(4)を補完する事由としての立退料の提供
    立退料の提供だけでは正当事由があると判断されることはありませんが、他の事情が備わっている上で、それを補完する事由として立退料の提供もあるときに、正当事由の一つとして認められます。

このように、借主の保護という立場に立った借地借家法によると、借主から契約解除、もしくは契約更新をしないという申し出がない限り、半永久的に賃貸借契約が継続することとなりかねず、貸主から契約を終了させるには、一般的に高額になりがちな立退料の提供が求められ、貸主にとっては大きな負担を強いられます。

これでは、土地や建物と持っている地主やオーナーは、契約の解除や退去を巡るトラブルを懸念して賃貸に出すのをためらったり、意に沿わない賃貸借契約を継続しなければならないなど、貸主にデメリットをもたらしてしまいます。

そこで、貸主側に一定のメリットがある制度として期間満了時に賃貸している土地や建物が確実に戻ってくる「定期借地契約」「定期借家契約」の制度があります。

定期借地契約

定期借地契約は、地主(貸主)が、契約の解除や更新、立ち退きや明け渡しなどについて過度な不安を持たずに安心して土地を貸せるように設けられたものです。

この定期借地契約と通常の借地契約(普通借地契約)との大きな違いは、定期借地契約は契約の更新(法定更新の制度)がない契約で、契約期間が終了した時点で確定的に契約が終了し、確実に明け渡しを受けることができます。契約期間についても自由に定めることができます。

ただし、契約方式については、口頭ではなく必ず書面でなければならず、その目的によって必ず公正証書でなければならないものもあり、これを怠れば法定更新のある普通借地契約とみなされてしまいますので、この点、留意する必要があります。

定期借地契約には、①一般定期借地(戸建て住宅やマンションの敷地を借りる場合に利用されるのが典型的な例です。)、②事業用定期借地契約(病院、学校校舎、レストラン、工場、倉庫などがあります。)、③建物譲渡特約付定期借地契約(分譲マンション、賃貸マンション、賃貸オフィスビルなどに利用されます。)の3種類があります。

一般定期借地契約 事業用定期借地契約 建物譲渡特約付借地契約
残存期間 50年以上 10年以上50年未満 30年以上
目 的 制限なし 事業用のみ 制限なし
契約方式 公正証書等 公正証書 定めなし
契約更新 排除特約可 規定適用なし 拘束されない
特 約 建物の築造による
残存期間の延長を排除可
建物買取請求権の排除可
更新不可
建物買取不可
30年経過後建物を
売却する旨を定められる
返 還 更地返還が原則 更地で返還 建物を地主に譲渡
定期借家契約

定期借家は、定期借地と同様に貸主に建物明け渡しや立ち退きを求めるのに必要な正当事由や立退料の提供の負担を強いることなく、一定の契約期間が満了したら契約を終了させることができる制度です。

この定期借家契約と通常の借家契約(普通借家契約)との違いは、次のとおりです。

① 契約期間が満了すると、必ず借家契約が終了

② 契約に基づき明け渡しを求めるのに、正当事由が不要

③ 契約に基づき明け渡しを求めるのに、立退料の提供が不要

定期借家契約を締結する際の主なポイントとしては、次の3つがあげられます。

① 契約期間に定めがあることを明示した書面による説明(貸主がこの説明を怠ったときは、その契約は定期借家としての効力はなくなり、普通借家契約となりますので、注意が必要です。)が必要です。

② 書面による契約(必ずしも公正証書による契約書が必要なわけではありません。)が必要です。

③ 1年未満の契約期間の定めも有効です。

また、定期借家契約の期間が満了したら契約が終了しますが、貸主と借主がともに合意すれば「再契約」という方法で借主は住み続けることもできますので、双方の意向や事情を充分に考慮して再契約を締結することができます。

まとめ

このように、定期借家契約や定期借地契約は、契約書に記載の契約期間が満了すれば、契約が終了するという点で、貸主に大きなメリットがあります。

他方、必ず書面による契約が必要であることや定期借地契約の一部の契約では、必ず公正証書による契約が必要であったり、定期借家契約の場合は、契約書とは別に定期借家契約に関する説明書面の交付が必要であることなど、契約時の手続きが煩雑であるというデメリットは否めません。

万が一、契約書面や契約時の手続きに不備があった場合には、定期借家契約・定期借地契約とは認められずに普通借地契約・普通借家契約とみなされてしまうなどのおそれも生じかねませんので、その契約時には、個別の事情に沿って正確に記載された内容の契約書の作成及び手続が必要です。

専門家である弁護士にご相談いただければ、正確かつ有効な契約書の作成や手続き全般についてアドバイス致しますので、お気軽にご相談ください。

ページ上部へ戻る

初回法律相談30分無料 電話で予約 092-406-3000

初回法律相談30分無料 メールで予約

弁護士法律相談コラム