不動産取引 建物明け渡しの強制執行

建物明け渡しの強制執行

建物明け渡しの訴訟手続きが終了し、請求認容判決あるいは明け渡しを内容とする和解が成立しても、建物の占有者(賃貸借契約を解除された元賃貸人等)が任意に退去しない場合に、不法占拠者であるからといって勝手に鍵を変えたり、力ずくで占有者を建物から退去させることはできません。

 確定判決や訴訟上の和解が成立していても、占有者を建物から退去させるためには、建物明け渡しの強制執行手続きによる必要があります。

以下、建物明け渡しの強制執行手続きの流れを説明します。

建物明渡の強制執行手続
強制執行の申立て
強制執行の申立ては建物の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に対して,執行文の付された債務名義(判決や和解調書)の正本,送達証明書等の書類を添付した申立書の提出をして行います。
執行官の打ち合わせ
明け渡しの催告期日、断行日の日程調整、動産執行を同時に行う場合には、動産の運搬の方法、動産の保管場所等の打ち合わせをします。

明渡の催告
執行官は、借主に対して、建物明け渡しの強制執行の申立てがなされてから原則2週間以内に、明け渡し執行の催告をします。
具体的には、催告から1か月後の日を引渡期限とし、それまでに自主的に退去するよう告知します。
催告後は,債務者が債権者以外の第三者に建物の占有を移すことは出来なくなり,仮に第三者に占有が移転した場合,変更後の占有者に対して,強制執行を行うことができます。
明渡催告は、執行官が補助者等を連れて、実際に建物の所在場所に赴き、債務者に催告することから、副次的な効果として,建物占有者に心理的なプレッシャーを与えることができます。
明渡の断行
執行官、執行補助者らとともに、建物所在地に赴き、建物内から家具等の動産の搬出を行ったり、鍵を付け替えたりし、借主を退去させます。
退去の際、妨害等が予想される場合には、あらかじめ警備会社や警察に連絡し、同行してもらいます。
建物内に残置された動産の強制執行

動産執行とは、借主が所有する動産を差し押さえて売却し、その売却代金を回収する手続です。

建物明け渡し執行を行う債権者は占有者に対して、家賃の滞納分などの金銭的な債権を有することが通常であるところ、差押えを行って換価可能な動産がある場合には、動産執行により債権を回収できるメリットがあります。

もっとも、居住用の建物の明け渡し執行においては、建物内の動産はそのほとんどが差押え禁止の動産となっています。具体的には、衣服、寝具、電化製品、66万円までの現金等が差押え禁止動産とされています(民事執行法131条)。

建物明け渡しの強制執行の解決事例

飲食店として利用している店舗の賃料を滞納している相手方に対し、貸主が賃料の請求とともに建物明け渡しの訴訟を提起し、認容判決を得た後、建物明け渡しの強制執行及び建物内の動産執行を行った事例

解決事例 ①

当事務所の依頼者であるA社は,建物を飲食店として利用させるため賃貸していたところ、借主であるB社が賃料を滞納し,度々催告しても支払いに応じないため,賃料の滞納を理由に賃貸借契約を解除し,建物明渡請求訴訟を起こして、A社の主張を全面的に認める判決を得ました。

A社は,B社が占有している建物を明け渡した後,速やかに第三者であるC社に対し、同建物をいわゆる居抜きで飲食店として貸す予定にしていました。

そこで,建物明渡執行と同時に建物内の動産(内装を含む)について動産執行を行い,これを債権者が任意で買い受け,動産については,新たな借主であるC社に売却することにしました。

判決確定後,すぐに,建物明渡及び動産執行の申し立てを行い,その1週間後に明渡催告を行い,断行日は明渡執行から2週間後とされました(断行日については,執行官との打合せの中で,早期に明け渡しを受ける必要があること,これまでの交渉や訴訟の経緯や借主が誠実に対応してこなかった事情等を説明し,かなり早期に設定してもらいました。)。

当初、借主が動産を持ち出すことも考えられたため,いったん動産を別の場所に移転保管して、持ち出しを防ぐことも検討しましたが、そうすると,保管場所の確保や運搬のコストがかかるため,明渡執行の際に,建物内の動産をすべて差し押さえて、執行官から借主代表者に対し、動産を運び出す等の行為を行えば執行妨害罪に問われるということを念押ししてもらいました。

万が一,動産を持ち出された際の証拠を押さえるべく、出入口付近に防犯カメラを設置することも検討しました(カメラについては結局設置は見合わせました)。また,同日,執行官の補助者により動産の価格の算定が行われました。

差押え動産の中には、リース物件が多数存在しており、リース物件であることが後に判明した動産については,その動産の範囲で動産執行の取下げを行い差押えの対象から外してリース会社に引き揚げてもらうか,新たな借主との間で,リース契約を締結してもらいました。

断行日に建物の鍵の付け替えを行い,動産については,補助者が算定した価格で債権者が任意に買い受けるという形を取りました。

その後,新たな借主であるC社に内装工事費用も併せて動産を売却し,滞納家賃分については売却代金から回収することができました。

こうして,判決確定日から5週間程度,建物明渡及び動産執行の申立て日から3週間程度で建物明渡が完了し,建物の新たな借主であるC社は,建物明渡から一月後には,同場所で飲食店を開店することができました。

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