不動産取引 不動産仲介会社の責任について

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不動産関連の取引では、取り扱う金額が大きいこともあり、トラブルがあった場合に当事者同士での話し合いだけでは解決が難しいケースが多いようです。

不動産取引に関することで、法律相談にみえられる方は賃貸物件関連のご相談と、売買物件関連のご相談の二つに大きく分けられます。

中でも法人様からのご相談は、やはり不動産管理会社様からの賃貸物件に関するご相談が多数を占めています。

弁護士法人高田総合法律事務所では、これまでの豊富な経験から、滞納家賃の回収から物件の明け渡しまで、不動産物件に関わる様々な問題に対応いたします。

不動産仲介会社の責任について

企業や個人の経済活動において、不動産の取引は不可欠です。経済の発展のためにも、不動産の有効活用はとても重要となります。

しかし、不動産は、その取引に関する情報が広く一般に流通しているとはいえず、また取引額が比較的高額になることに加えて、個々の不動産ごとに様々な地理的・社会的な特性、法規制の状況など複雑な考慮をして取引の判断を行わなければならず、その取引においては、不動産仲介業者の仲介によって、売買や賃貸借の契約が成立するケースがほとんどです。

不動産売買や賃貸といった不動産取引を仲介する宅地建物取引業者は、宅地建物取引の専門家として、仲介依頼者のために善管注意義務といってプロとして必要な注意を尽くして仲介業務を行うべき義務を負っています。

仲介を依頼する顧客からみて、宅地建物取引業者は不動産取引に関する専門的な知識を備えているものと期待していますから、取引業者はその期待に応えるよう誠実に顧客への情報提供、説明、条件調整等を行わなければなりません。

不動産仲介業者からみて仲介に関するトラブルで多いのは、仲介を依頼された顧客から説明義務違反を理由として損害賠償を請求されたり、仲介手数料を支払ってもらえないケースです。

そこで宅地建物取引業者は、後に顧客から損害賠償を請求されないために、取引対象となる物件について必要な調査を尽くし、重要な事項については説明する等リスク管理を徹底する必要があるのですが、以下では宅地建物取引業者の調査・説明義務について、その範囲について解説し、問題となった事例をご紹介いたします。

宅地建物取引業者の調査・説明義務の範囲

宅地建物取引業者は仲介依頼者に対して、その者が取得しまたは借りようとしている物件に関して、一定の重要事項を書面で説明する義務があります(宅地建物取引業法35条1項)。実際の取引では、取引主任者が法35条1項の列挙事項が記載された「重要事項説明書」を依頼者に交付して、重要事項を説明することになります。

35条1項に列挙されている説明が必要となる重要事項の概観
  • ① 物件に関する権利関係の明示
    ・登記された権利の種類,内容等(1号)
    ・私道に関する負担(3号)
    ・定期借地権又は高齢者居住法の終身建物賃貸借の適用を受ける場合(14号)
  • ② 物件に関する権利制限内容の明示
    ・都市計画法,建築基準法等の法令に基づく制限の概要(2号)
    ・用途その他の利用に係る制限に関する事項(14号)
  • ③ 物件の属性の明示
    ・飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況又はその見通し(4号)
    ・宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状,構造等(未完成物件のとき。5号)
    ・当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か(14号)
    ・当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か(14号)
    ・当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か(14号)
    ・石綿(アスベスト)使用調査結果の内容(14号)
    ・耐震診断の内容(14号)
    ・住宅性能評価を受けた新築住宅である場合(住宅性能評価書の交付の有無。14号)
    ・住宅性能評価を受けた新築住宅である場合(住宅性能評価書の交付の有無。14号)
    ・管理の委託先(14号)
  • ④ 取引条件(契約上の権利義務関係)の明示
    ・代金,交換差金以外に授受される金額及びその目的(7号)
    ・契約の解除に関する事項(8号)
    ・損害賠償額の予定又は違約金に関する事項(9号)
    ・契約期間及び契約の更新に関する事項(14号)
    ・敷金等契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項(14号)
    ・契約終了時における建物の取壊しに関する事項(14号)
  • ⑤ 取引に当たって宅地建物取引業者が講じる措置
    ・手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合。10号)
    ・支払金又は預り金の保全措置の概要(11号)
    ・金銭の貸借のあっせん(12号)
    ・瑕疵担保責任の履行に関して講ずる措置の内容(13号)
  • ⑥ 区分所有建物の場合はさらに次の事項(全て6号)
    ・敷地に関する権利の種類及び内容
    ・共有部分に関する規約等の定め
    ・専用部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
    ・専用使用権に関する規約等の定め
    ・所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
    ・修繕積立金等に関する規約等の定め
    ・通常の管理費用の額
    ・マンション管理の委託先
    ・建物の維持修繕の実施状況の記録

しかし35条1項は、最低限これだけは説明しなければならないという事項を列挙したものにすぎません。

取引業者は、仲介依頼者との間の委託関係に基づき高度の注意義務を負っていますから、依頼者が不動産の売買や賃貸借契約を締結するか否かを判断する上で重要となる事項については、たとえそれが35条1項に規定されていなくても調査・説明義務が生じます。

裁判例においても、例えば東京高判平成13年12月26日は「(宅地建物取引業法35条1項)が、「少なくとも」同条に掲げられた事項について、宅地建物取引主任者に説明させるべきものとしていることに照らせば、同条に規定された重要事項は、買主保護のために最低限の事項を定めたものに過ぎないと解される。

そうすると、宅地建物取引業者は、信義則上、同条に規定されて事項が勿論、買主が売買契約を締結するかどうかを決定するような重要な事項について知り得た事実については、これを買主に説明、告知する義務を負い、この義務に反して当該事実を告知せず、又は不実のことを告げたような場合には、これによって損害を受けた買主に対して、損害賠償の責めに任ずるものと解するのが相当である。」と判示しています。

例えば、賃貸借を仲介しようとする建物について、仲介依頼者の使用目的しだいでは建築基準法6条1項の定める用途変更確認が必要となり、その場合、当該建物の確認済証と検査済証が必要となります。

したがって、宅地建物取引業者は仲介しようとする建物について用途変更確認をする必要があるかどうかを調査するとともに用途変更確認の必要がある場合には、当該確認申請に必要な確認済証及び検査済証の有無についても説明する義務があります。

宅地建物取引業者がこの調査・説明義務に違反して、依頼者が賃借した建物で予定していた事業を開始できなくなったり、あるいは事業開始が遅れた場合には、債務不履行に基づく損害賠償責任を負わせられることになります(東京地判平成28年3月10日参照)。

しかし、一般論として宅地建物取引業者は、建物や建築の専門家ではありませんから建物の適法性に関するあらゆる事項について調査説明義務を負わせることは酷でありますし、どのような事項が依頼者にとって重要であるかは個々の取引によって異なってきます。

よって宅地建物取引業者に35条1項に列挙されたもの以外の事項についても調査・説明義務があったか否かは事案の具体的事情を考慮して判断せざるを得ませんが、一般的には以下のような事情が考慮要素として考えられます。

  • ・仲介依頼者が不動産取引の目的を達成する上で、当該事項が法律上・事実上の障害となるか
  • ・宅地建物取引業者が依頼者との交渉過程で、依頼者から仲介対象である不動産の使用目的や契約締結する上での懸念を聞かされていた等、宅地建物取引業者に調査義務が生じる端緒があったか
  • ・宅地建物取引業者において、当該事項を調査・説明することに特段の支障があったか

このような考慮要素からみた場合、上記に挙げた用途変更確認以外にも例えば以下のような事項が調査・説明義務の範囲に含まれると考えられます。

  • ・当該物件で過去に自殺や殺傷事件があったこと(心理的瑕疵と評価される事実)
  • ・「買換え特約」が付いており,買主が手持ち物件を売却できなかったときは、売買契約が解除されること
  • ・当該物件を賃貸するには,賃貸保証会社と保証委託契約を締結しなければならないこと
  • ・仲介対象である土地が,水分が多くて軟弱であり,沈下を起こしやすい地盤であること
調査・説明義務違反の損害賠償の範囲

それでは仲介業者が上記の説明義務に違反した場合、仲介業者はどの範囲で仲介依頼者に対して損害を賠償しなければならないでしょうか?

すなわち、仲介依頼者が損害を被ったとして、どこまで仲介業者は支払い義務を負うのでしょうか?

仲介業者に落ち度がある場合に、どこまでの責任を取る必要があるのか、実務的にはとても重要な問題となるといえます。

その答えは、抽象的にいえば、仲介業者が負う説明義務違反によって仲介依頼者が被った損害を賠償することになります。

法律的にいうと、仲介業者の義務違反と相当因果関係にある損害で、仲介依頼者に生じた損害が、賠償責任が認められる損害ということになります。

仲介業者が説明したり、情報提供していれば避けられたはずの損害が賠償責任の対象となるのです。

例えば,不動産を賃借して店舗を営業しようとした会社が不動産仲介業者に依頼をして、物件を見つけ、実際に賃貸借契約を締結したところ、賃借した建物は、店舗営業のためには用途変更確認が必要であったとします。

そして、賃貸借契約を締結した会社は、宅地建物取引業者から用途変更が必要であることを告知されていなかったとします。

この場合、賃借人は、用途変更ができるまでの間、目的に沿った使用ができないという損害が生じます。

とすると、仲介を依頼した者は、賃貸借契約後に当該建物で予定していた事業を開始できなくなったり,あるいは開始が遅延する等して逸失利益(営業利益)分の損害が生じたとして、その利益分を請求できるでしょうか?

この問題を考えるにあたってまず必要な視点としては、仮に宅地建物取引業者において調査説明義務及び情報提供義務を尽くしていたとしても,客観的にすぐに当該建物において目的に従った使用が出来るわけではないということです。

すなわち、仲介業者の義務違反によって、生じた事態というのは用途変更の手続きが遅れることになったということなのです。

用途変更にどのくらい期間がかかるかによっては、そもそも仲介業者の義務違反がなければ、別の不動産を借りて店舗が開業ができたはずだと仲介依頼者は主張するかもしれませんが、別の不動産で店舗を開業することができる可能性が高く、その場合は今回の不動産で店舗開業するよりも早く開業できた可能性が高いとの立証ができない限り、基本的には、賃貸借契約後に当該建物で予定していた事業を開始できなくなったり、あるいは開始が遅延する等して逸失利益(営業利益)分の損害まで認められる可能性は低く、宅地建物取引業者が賠償責任を負うのは信頼利益(当該建物で事業を開始できると信頼して支出した契約費用等)に限られると考えられます(東京地判平成28年3月10日判決参照)。

当事務所が支援することができること ~不動産会社との顧問契約~

高田総合法律事務所では、これまでの豊富な経験から、宅地建物取引業者の方の不動産仲介業務に関する様々なトラブルに対応いたします。

また、事後的な対応だけではなく、仲介依頼者との交渉に関してのアドバイスや重要事項説明書の内容の見直し等の紛争を未然に防止するための対策につきましてもご相談に応じます。

なお、当事務所では、不動産仲介業者様のご希望により顧問契約を結ばせていただき、仲介業務以外の不動産管理業務や仲介営業、被用者との労働関係等についても幅広く日常的なアドバイス、紛争時の対応を迅速に行い、不動産会社の問題解決をサポートさせていただきます。

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