【事業承継】
・現在会社を経営しており、3人いる息子のうちの一人に継がせたいと考えている、3人が争いにならないように、かつできるだけコストをかけずに継がせるにはどうしたらよいか。
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- まず,会社の現状を正確に把握することが重要です。会社の人・お金・物はもちろん,経営者自身の資産等を把握し,事業承継計画の立案をします。
- 資産を引き継がせる方法は売買,生前贈与,遺言,死因贈与などがあります。
- 相続人が複数いてそのうちの一人に会社を引き継ぎたいという場合には,後継者への事業用資産を集中し,後継者以外の相続人に対しては,生前贈与や遺言書により財産分与に配慮が必要でしょう。
- 仮に相続人間の争いが発生せずに相続人のうちの1人に会社を承継できたとしても,多額の相続税が課される場合も考えられます。
- 円滑かつ低コストの事業継承方法の選択は弁護士にお任せください。
【企業法務】
・従業員十数人を雇って会社を経営しているが、今後の拡大も見込んで社内の就業規則や労働条件に関する書面を整備したい。
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- 就業規則とは,賃金や就業時間などの労働条件を定めた職場規律のことです。常時10人以上の労働者を使用する場合は,就業規則の作成及び労働基準監督署への届出が義務付けられています。(労働基準法第89条)
- 労働基準法は最低基準であるため,就業規則や労働契約はこれに反することができません。また労働契約よりも就業規則が優先し,就業規則の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約条項は無効です。使用者が労働者の同意を得ることなく一方的に就業規則を変更して労働条件の不利益変更を行うことも,原則として許されません。
- 就業規則や労働条件に関する書面を作成する際には,労働基準法に違反しない限度で,会社の実態に合ったものを作成することが重要です。
- 就業規則には,必ず記載しなければならない事項などもありますので,ご不明な点は弁護士にご相談ください。
【営業秘密保護】
・先月退社した営業社員が、当社の顧客名簿を持ち出して新たな会社を設立し、当社の顧客を横取りしている。
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- 雇用契約書や就業規則等に「秘密保持」に関する条項があり,同行為がこれに反していれば当該条項を根拠として損害賠償請求等の手段を採ることができます。
- 「秘密保持」に関する条項がない場合であっても,民法上の不法行為や不正競争防止法上の不正競争にあたれば,差止請求,損害賠償請求といった手段を採ることができます。
- ただし,「損害」や「営業秘密」といった法律要件事実の立証は困難な場合が多いのが実情です。
- たとえば,不正競争防止法上の「営業秘密」といえるための要件は,①第三者からみても秘密として管理されていることが客観的に明らかなこと,②営業上,有用な情報であること,③情報が公然と知られていないことですが,顧客名簿の秘密管理性が否定され,不正競争防止法上の営業秘密に該当しないと判断されるケースもみられます。
- ぜひ弁護士へご相談ください。
【事業再生】
・本業とはあまり関係がないところからの借入に対する返済が多額で、本業の足かせになっており、債権カットが必要だ。
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- このような場合,事業再生の方法として,私的整理や民事再生,会社分割といった様々な方法が考えられます。
- その中で,企業価値を維持する最善の方法は何かということを,事業の内容や今後の再建の見通し,借入の額等から判断し,最適のタイミングで実行する必要があります。
- たとえば,リスケなどの私的整理による方法は,企業価値の毀損は比較的少ないですが,金融機関との交渉を要します。収益力が上がる見通しを付けた上で交渉を行わなければ,通常,債権カットに応じる金融機関はありません。
- 他方で,民事再生の申立てを行うと債権カットは出来ますが,倒産イメージによる信用の毀損は大きくなります。この場合でも,企業価値の毀損を最小限に抑えるために民事再生中のスポンサー企業をあらかじめ付けておくなどの方法もあります。
- 事業再生のスキーム策定は,経営状況の判断に加え,税務,労働法,会社法といった専門知識を必要とする場面ですので,ぜひ弁護士にご相談ください。
【知的財産】
・競合他社が当社の主力商品名と混同するような名称の商品を販売している。何か請求できないだろうか。
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- 自社が商標権を取得している場合,その内容として,指定商品又は役務について登録商標の使用を専有する権利(専用権),及び,他人によるその類似範囲の使用を排除する権利(禁止権)があります。
- したがって,登録商標と同一又は類似の商標を使用するものに対して,侵害行為の差止や損害賠償等を請求できます。
- 商標の類似性については,外観・呼称・観念といった判断要素を客観的な一般取引者が通常の注意力を判断基準として判断することとなっていますが,実際の判断は困難な場合があります。
- 詳しくは弁護士にご相談ください。
【労務管理・労働組合・団体交渉】
・当社は、「常時10人以上の労働者」を使用してはいませんので、就業規則の作成義務はないようですが、就業規則は作っておいた方がいいのでしょうか?
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- 結論から申しますと、就業規則は作られておいた方がいいと考えます。
- 確かに、労働基準法89条には、常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない旨定めています。すなわち、「常時10人以上の労働者」を使用していなければ、就業規則を作成する法的な義務はありません。
- しかし、就業規則は、事業所ごとに統一的に、労働条件など基本的な会社のルールを定めたものです。ゆえに、就業規則は、労使間のルールブックとして、労使間のトラブルを事前に防ぐという意味でも非常に重要なものです。
- そこで、労働基準法上作成する義務がない事業場ないしは会社であっても、貴社が自主的に就業規則を作成することは、労使間のルールの明確化という観点からはとても望ましいことだと考えます。
・当社は、創業以来労働者とのトラブルなくやってくることができていましたが、そのおかげもあり、当社の就業規則は10年前に労働基準監督署に届け出をして以降、数度の改定を行っているものの、労働基準監督署への届出を怠ってしまっております。現在の当社の就業規則の効力は、どうなっているのでしょうか?
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- まず、改定された就業規則について届出を怠っていることから、使用者側が有利になるのは不合理であるから、使用者側にとって不利すなわち労働者側にとって有利な条項については、改定後の就業規則の効力が認められると解されています。
- また、上記以外の条項についても、就業規則が労働契約関係を規律するためには、労働者への実質的周知(就業場所での備え付け等の周知)は必要であるが、行政官庁(労働基準監督署)に届出を行うことは要件ではないと解されています。
- 以上より、結論的に言えば、労働基準監督署への届出を怠っている改定後の就業規則についても、労働者への実質的周知(就業場所での備え付け等の周知)が行われていれば、有効であるといえます。
・当社は、労働時間の管理に関しては、労働者に任せるところが大きく、自己申告に基づいて労働時間を管理していますが、使用者側として労働時間の管理について気をつけておかなければならないことを教えてください。
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- ⇒業務分野ページへ
・当社は、労働時間の管理について、タイムカードによる管理を採用していますが、タイムカードを集計する際に、毎日15分単位で切り捨てて集計して計算しています。労働時間の計算方法として問題があるのでしょうか。
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- 結論から言いますと、問題があります。
- 毎日の労働時間の集計の方法として、15分単位で切り捨てて集計して計算することはできず、1分単位で集計する必要があります。
- もっとも、厚生労働省の通達の中には、1か月における時間外労働の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることについては、常に労働者に不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、労働基準法違反として取り扱わないとしたもの(昭和63年3月14日基発150号)があります。
・当社の従業員が、飲酒運転(具体的には、酒酔い運転)をしたことが発覚しました。その従業員は、当社の業務の一環として自動車の運転に従事することはなく、今回の飲酒運転も全くプライベートの用事で行ったものです。当該従業員に対して、今回の飲酒運転を理由に懲戒処分をすることは適法でしょうか。
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- 結論から言えば、懲戒処分をすることは適法であると考えられます(懲戒解雇まで認められるかどうかは事情によります)。
- 考え方として、企業の懲戒権は、企業秩序の維持のためにあるところ、従業員の私生活上の行為は、会社とは無関係であり、懲戒処分の対象にならないとも考えられます。しかし、実際には、一従業員の私生活における行動であっても、その所属する企業の社会的評価を低下させることがあるというのが現実です。
- そこで、多くの企業の就業規則には、「会社の対面を著しく汚した場合」等と規定し、従業員の私生活上の行為に対しても、会社の評価を低下させた場合には、懲戒処分を持ってのぞむことが定められています。そして、裁判例においても、当然のことながら従業員の懲戒対象行為が職場の中でのことか、外の私生活上でのことかによって違いは生じますが、従業員の私生活上行為であっても、先述の企業秩序の維持に影響を及ぼすものであったり、企業の社会的評価を低下させると客観的に認められるものである場合には、懲戒処分の対象となることが認められています。
- 例えば、最高裁昭和49年2月28日判決は、旧国鉄の職員がデモに参加中に公務執行妨害をしたということで有罪判決を受けた行為に関し、懲戒免職とされた事案において、「従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれなしとしないのであつて、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであつても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もありうるといわなければならない。」と判示している。
・当社の従業員が窃盗で警察に逮捕されました。現在までに収集できた情報によると、当該従業員は、被疑事実を否認しており、起訴されれば裁判で事実関係を争う予定とのことです。 補充の人員を採用したいと考えています。直ちに解雇しても適法でしょうか?
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- 本件事例においては、未だ当該従業員が窃盗を行ったかどうかは不明です(逮捕されただけでは、裁判所がその事実を認めたわけではなく、起訴されれば裁判において、事実関係が明らかにされます。)
- ゆえに、会社側の事情も理解できますが、逮捕段階での解雇には慎重になられた方が賢明です。事情をしっかり調査したうえで、弁護士と対応を協議される必要があると考えます。なお、顧問先企業の方から、従業員が逮捕されたので、弁護人となることも想定して、警察署に接見に行ってほしいとの依頼を受けることがありますが、この質問の内容でも明らかなように、企業側と従業員の利益が対立する場面も想定されますので、そのような点についても弁護士と相談のうえ、弁護士に接見に行ってもらうかどうかをお決めになるといいと考えます。
・当社は、従業員数60人ですが、そのうちの3人だけが労働組合を結成し、当社に団体交渉の申し込みをしてきました。このようなごく少数の者が結成した労働組合であっても、団体交渉に応じなければならないのでしょうか?
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- 結論から言えば、団体交渉に応じなければなりません。労働組合法7条(不当労働行為)には、「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。」と定められており、その2号に「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」と定められています。すなわち、使用者は、いくら従業員のうちの少数の者しか所属していないとしても、雇用する従業員が組織する労働組合との団体交渉に応じる義務があり、応じなければ不当労働行為となってしまうと解されます。
・当社の従業員が所属する労働組合からの団体交渉の申し込みに対しては応じなければならないことはわかりましたが、団体交渉の議題として、いかなる事項についての交渉のテーブルに着かなければならないのでしょうか?
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- 使用者として労働組合と団体交渉を行わなければならない事項(義務的団体交渉事項)について、抽象的な言い方をすれば、「使用者が雇用する労働者である組合員の労働条件その他の待遇や使用者と労働組合間の労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能な事項」ということになります。
- 具体的には、上記基準からすると、①非組合員に関すること、②経営権事項に関すること、③既に退職した者に関すること、については、原則として、義務的団体交渉事項となりません。
- しかし、①非組合員に関することについても、組合員の労働条件や権利等に関わりが強く、影響を及ぼす可能性が高いものについては、組合員の労働条件その他の待遇についての交渉事項として、団体交渉に応じる義務が認められることがありますので注意が必要です。
- また、②経営権事項に関することについても、事業譲渡による体制の変更等について、労働条件や労働者の雇用そのものに重大な影響がある場合には、団体交渉に応じる義務が認められることがありますので注意が必要です。
- さらに、③既に退職した者に関することについても、解雇された者の解雇そのものや退職条件、それに関連する事項については、団体交渉に応じる義務が認められることがありますので注意が必要です。
- なお、できることなら、団体交渉の議題についても、当法律事務所の弁護士に相談したうえで、団体交渉に臨むようにして下さい。
・当社には、前職の活躍を評価して、即戦力として中途採用で管理職として入社してもらった社員がいるのですが、能力不足を理由として解雇することはできないでしょうか?
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- まず、貴社の場合のように、中途採用する従業員には、即戦力としての期待がなされることが多いと思われます。
- しかし、中途採用した従業員が、期待した能力を発揮できなければ当然に解雇が認められるわけではありません。すなわち、新卒採用であろうと、中途採用であろうと、基本的には解雇することができるかどうかという点では違いは生じません。
- もっとも、中途採用の場合には、「地位または職種が特定された労働契約」が締結されることがあり、そのような場合に、解雇を有効と認める裁判例があります(東京高裁昭和59年3月30日、フォード自動車事件。当該裁判例は、本件雇用契約は「人事本部長」という地位を特定した契約であると認定・判断したうえで、控訴人の人事本部長としての勤務実態の認定に基づいて、人事部長としての適格性を欠くとして、当該解雇を有効としています。)。
- また、「地位または職種が特定された労働契約」とまではいえなくても、入社の経緯から、一定の能力があることが労働契約の内容となっているといえる場合には、その他の場合に比べれば、比較的解雇が認められやすくなると解されています。