個人再生の手続を選択した場合でも返済負担の軽減されない債務がある


個人再生の手続を選択した場合でも返済負担の軽減されない債務がある

個人再生の手続は、裁判所の認可により、借金の総額を圧縮して原則3年間の分割返済により完済すれば残りの債務の返済義務は免除される債務整理の方法です。

このように個人再生の手続は借金の返済に苦しむ債務者にとって返済負担を大幅に減少させることのできる非常にメリットの大きい債務整理の方法になります。

しかし、個人再生の手続による場合でも、一定の債務については、その額について減免の対象にならないものがあります。これを非減免債権といいます。

それでは、個人再生における非減免債権とは、どのような債権なのでしょうか。また、個人再生の手続において、非減免債権はどのように扱われ、また、非減免債権の該当性を争う場合にはどのようにすればよいのでしょうか。

非減免債権に関する3つのポイント!

個人再生における非減免債権に関するポイントは以下の4つです。

1つ目は、非減免債権の種類です。

2つ目は、非減免債権は個人再生の手続において他の借金と同様に扱われることです。

3つ目は、個人再生の手続において非減免債権の該当性については判断されないことです。

4つ目は、再生計画に従った弁済を終了した後の非減免債権の返済の方法です。

以下、順番に解説します。

どのような債権は非減免債権なの?

個人再生における非減免債権の典型は、以下の3類型です。

①他人を害する意思により行われた不法行為に基づく損害賠償請求権

ここでの「他人を害する」とは、単なる故意を超え、積極的に相手を害することを意図していることを意味します。

②故意または重大な過失により他人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

ここでの「故意」とは、わざと、という意味です。

また、「重大な過失」とは、軽度の不注意、あるいは程度の著しい不注意を超えるような重度の不注意を意味します。

たとえば、交通事故の場合では、無免許運転、酒酔い運転、居眠り運転などは重過失に当たるとされています。

このような重過失の典型に当たるケースは特に問題はありませんが、それ以外の態様の不法行為については個別の判断になりますから、ときに重過失の有無を争点として、非減免債権の該当性が争いになることがあります。

③養育費・婚姻費用・扶養料の請求権

ここでの養育費等の請求権は個人再生手続開始前に発生した請求権に限られていることに注意しましょう。

これは、他人を扶養するための金銭の請求権は、日々刻々と発生するものであると考えられているため、再生手続開始後の養育費は共益債権として随時支払することができるからです。

もっとも、こうした養育費等の支払額により再生計画の履行可能性に大きな影響を及ぼす場合があることに注意しましょう。

非減免債権は減免されない以外は他の債権と同じように扱われる!

非減免債権は個人再生の手続により減免されないという点では他の債権とは異なるものの、それ以外は他の債権と同様に扱われます。

すなわち、非減免債権でも再生債権として債権者一覧表に記載します。

そして、再生計画の手続開始後は、非減免債権でも再生計画によらない返済は禁止されることになります。

たとえば、仮に借金総額の20%にあたる債務を3年の分割返済により完済する再生計画により返済を開始した場合には、非減免債権でも20%の部分を3年間の分割返済することになるのです。

最終的に非減免債権はどのように返済することになるの?

上述のとおり、非減免債権でも、他の再生債権と同様に扱われ、法律のルールに従い圧縮して原則3年の分割返済となり、再生計画によらない弁済は禁止されます。

たとえば、再生債権の中に200万円の非減免債権のある場合、総額の20%を返済する再生計画について裁判所により認可されたときは、200万円の20%にあたる40万円を3年かけて分割返済することになります。

それでは、残りの160万円はどのように返済することになるのでしょう。

この点について、法律では、再生計画に基づく弁済期間終了後、残りの160万円を一括返済すべきとされています。

ちなみに、非減免債権を再生手続において再生債権として一覧に記載しなかったときには、再生計画に基づく弁済期間中、当該非減免債権の返済は許されません。

この場合には弁済期間終了時に全額を一括返済することになるのです。

どちらにせよ、非減免債権は、再生計画に基づく返済期間終了後にある程度のまとまった金額を一括返済する必要がありますから、債務者としては、再生計画を履行しながら、少しずつ非減免債権の一括返済に備えて貯蓄しておく必要があります。

どうしても、一括返済できないときには、債権者と交渉して非減免債権の残部について分割返済を認めてもらえるよう交渉することになります。

非減免債権の該当性を争う場合はどうすればよいの?

たとえば、自動車による人身事故の加害者について個人再生の手続を利用した際、被害者は重大な過失により身体を害する不法行為であるから非減免債権であると主張して全額の賠償債務の履行を主張したのに対して、加害者は重過失はないとして非減免債権には当たらないと主張したとしましょう。

このような個人再生における非減免債権の該当性の争いについて、裁判所は、個人再生の手続内では判断しません。

なぜなら、非減免債権でも基本的には他の債権と同じように扱われ、再生計画に従い分割返済していくことになるため、個人再生の手続内において非減免債権の該当性を判断する必要性はないからです。

結局、非減免債権の該当性は再生計画に基づく弁済期間終了後、債権者から残債務を請求された際に争われるべきことになり、話し合いでも解決しなければ、訴訟において裁判所の判断により決着することになるのです。

なお、個人再生手続内では非減免債権の該当性について判断されないとはいえ、後の紛争を防止する観点から、当事者間において非減免債権性について争いのない場合には、再生計画に従った弁済終了後に一括弁済する旨を再生計画案に記載しておくとよいでしょう。

まとめ

個人再生の手続では、原則として、全ての債務を対象に総額を圧縮して分割返済すれば、残りの債務の返済義務は免除されます。

しかし、一部の債権については、他の債権と同様に分割返済するものの残りの債務の返済義務について免除してもらえないものがあります。これを非減免債権といいます。

非減免債権の例としては、悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権、故意または重過失により人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、養育費請求権などがあります。

非減免債権でも、個人再生の手続では、他の債権と同じように再生債権として申告することになり、再生計画によらない返済は禁止されます。

そして、再生計画の履行完了後、非減免債権の残部については一括返済しなければならないとされています。

このとき、はじめて非減免債権の該当性を争うことができます。

逆にいえば、個人再生の手続内では、非減免債権の該当性は判断されません。

以上のとおり、個人再生手続における非減免債権の取り扱いについては、いくつかの注意すべき点があります。

返済に困っている債務の中に不法行為による損害賠償債務や養育費などのある場合には、必ず弁護士に申告した上、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

弁護士法人 高田総合法律事務所

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