個人再生を利用する場合には、滞納家賃や滞納光熱費を解消することはできないの?


個人再生を利用する場合には、滞納家賃や滞納光熱費を解消することはできないの

個人再生はすべての借金を対象にして、その総額を圧縮して原則3年の分割返済により完済する手続になります。

そのため、すべての借金について、約束どおりの返済のできない状況であるのに、特定の借金だけを返済することは公平を害するため許されません。

それでは、家賃や水道光熱費を滞納しているような場合、そうした債務でも、やはり返済は許されないのでしょうか。

もし、許されないのであれば、賃貸借契約の解除や水道・電気・ガスの供給はストップされてしまい、現在の住んでいる家での生活を続けることは非常に難しくなります。

今回は、個人再生の手続を利用する場合における滞納家賃・水道光熱費の解消について解説します。

滞納家賃は他の借金と同様に扱われるため支払は禁止!

個人再生の手続において滞納家賃は他の借金と同様に扱われます。

したがって、滞納家賃を解消しないまま個人再生の手続を利用すれば、滞納家賃の支払義務の一部を免れることにはなりますが、反面、賃貸借契約違反となり契約を解除され退去を求められます。

しかし、個人再生手続では、債権者の平等を図るため、特定の債権者だけに返済することは禁止されます。

そのため、退去を免れるために滞納家賃だけを解消することはできません。

実際に滞納家賃を解消してしまった場合にはどうなるの?

それでは、実際に滞納家賃を解消してしまった場合にはどのようになるのでしょう。

以下、個人再生手続開始前の滞納家賃の解消と個人再生手続開始後の滞納家賃の解消の場合とに分けて説明します。

個人再生手続開始前の滞納家賃の解消

まず、個人再生手続開始前における滞納家賃の解消を直接禁止する法律上の規定はありません。

それでも、上述のとおり、滞納家賃だけを解消する行為は他の債権者との平等を害する行為であるため、破産や通常の再生手続では否認権の対象になります。

ここでいう否認権とは、滞納家賃の支払の効力を否定して、家主に家賃として受領した金銭を返還させる権限を認めるという意味です。

もっとも、個人再生では、このような否認権の制度はありません。

しかし、否認権の制度のないことをいいことに滞納家賃だけを解消する行為は、裁判所により個人再生の手続自体を否定される原因になり得ます。

また、滞納家賃の解消のために使われた金銭は清算価値として計上され、個人再生における返済総額の増大につながり、再生計画を履行できなくさせる危険があります。

清算価値とは、破産した場合に借金の返済に充てられる債務者の財産であり、個人再生では法律上の最低弁済額と清算価値の多額の方を返済することになっています。

個人再生手続開始後の滞納家賃の解消

次に、個人再生手続開始後の滞納家賃の解消は法律上直接禁止されています。

そのため、個人再生手続開始後の滞納家賃を解消する行為は無効です。

債務者は家主に対して滞納家賃の解消のために支払った金銭の返還を請求することができ、このような請求権は財産権として清算価値に計上されます。

また、多額の滞納家賃を解消した場合には、裁判所の判断により個人再生手続は廃止され、そこで終了してしまうこともあります。

ちなみに、個人再生手続を選択する債務者が個人事業主であり、店舗や工場を借りており、これを賃貸人に明け渡すと事業の継続が困難になるようなケースでは、特別に裁判所の許可を得た上、滞納している家賃を解消できる制度があります。

どうしても滞納家賃を解消したい場合には第三者弁済を検討する!

このように個人再生の手続を選択する場合、滞納家賃の解消は原則禁止です。

どうしても住居を失わないために滞納家賃を解消したい場合には、債務者以外の第三者に滞納家賃を解消してもらう方法があります。

但し、第三者に滞納家賃を解消してもらう場合でも、実質的に債務者の財産から滞納家賃を解消することにならないよう注意しましょう。

また、少額の滞納家賃の場合には、住居の維持という不当ではない目的による債務の弁済であることを理由に許容されることもありますが、これはリスクの高い最終手段ですから、よく弁護士と相談した上、行うようにしましょう。

滞納水道光熱費の解消は原則禁止されない!

滞納家賃の解消の問題に似たものとして、滞納水道光熱費の解消の問題があります。

水道光熱費の滞納を放置すればライフラインはストップしてしまい日常生活に大きな支障が生じることになります。

そのため、個人再生の手続を利用する際、もし水道光熱費の滞納のある場合には、これを解消することの可否は債務者にとって非常に関心の高い問題の1つです。

水道光熱費は他の借金とは別に優先的に返済することを認められている!

滞納している水道光熱費は他の借金と同じように再生手続の対象になります。

もっとも、下水道料金は公課に該当するため一般優先債権として、他の債権に優先して返済することができます。

つまり、債権者の平等の原則は、ここでは修正され、一般優先債権に該当する債権は、他の債権に優先して弁済を受けることが認められるのです。

また、下水道料金以外の水道光熱費でも、再生手続開始前6ヶ月間の生活に必要となる供給に関する債務については、同様に一般優先債権として優先的に返済することができます。

さらに、再生手続の申立から手続開始決定までの水道光熱費は共益債権といい、個人再生の手続において利害関係を有する者の共同の利益のためにされた行為により生じた債権であることを理由として、他の債権に優先して支払することができます。

以上のとおり、一般優先債権や共益債権に当たる水道光熱費は随時弁済できますから、これらの滞納を解消することは許されます。

支払の禁止される滞納水道光熱費のある場合はどうなるの?

一般優先債権や共益債権に当たらない滞納水道光熱費は、他の借金同様、優先的に返済することは禁止されます。

つまり、個人再生手続において認可された再生計画によらない滞納の解消は許されないことになるのです。

但し、そのための水道光熱費の滞納を理由として、水道、ガス、電気等のライフラインの供給を停止することは禁止されていますから、日常生活における不利益は回避できます。

まとめ

個人再生において、滞納家賃や滞納水道光熱費の解消は安定した日常生活を送るための重要問題の1つです。

まず、個人再生において、滞納家賃の解消は原則禁止です。

賃貸物件からの退去を回避するため、どうしても滞納家賃を解消したい場合には、親族などの第三者の財産から滞納家賃を解消してもらうようにしましょう。

もし第三者の協力を得られないときには、リスクは高いですが、少額の滞納滞納であれば、その解消は住居の維持という正当な目的による債権者の不利益の少ない支払として許容されることもあります。

他方、滞納水道光熱費については、一般優先債権あるいは共益債権として、原則、他の債権に優先して解消することができます。

仮に滞納水道光熱費を解消できない場合でも、滞納を理由に水道・電気・ガスの供給を停止することは禁止されていますから、安心しましょう。

以上、個人再生における滞納家賃や滞納水道光熱費の解消の問題は法律上の難しい問題を含んでいるため、自分だけの判断により対応することなく、適宜、弁護士と相談した上、対応するようにしましょう。

弁護士法人 高田総合法律事務所

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