5000万円を超える借金のある場合には個人再生は利用できない?


5000万円を超える借金のある場合には個人再生は利用できない

個人再生とは、借金の総額を圧縮して、原則3年間の分割返済により完済する債務整理の手続です。

個人再生では、自己破産のように借金0とはならないものの返済の負担は大幅に減少するため、借金の返済に苦しんでいる方にとっては、非常に利用価値の高い手続になります。

ただし、個人再生の手続を利用するには、借金総額5000万円以下であることを要件とされています。これを5000万円要件といいます。

今回は、個人再生を利用するための5000万円要件の充足について、その対象となる債務や判断の時期などについて解説します。

【目次】

そもそも5000万円要件は何のためにあるの?

個人再生の手続は、比較的少額の借金を抱える個人を対象として、通常の再生手続を簡略したものになっています。

また、個人再生により、債権者は裁判所の判断により大幅に債務の額を圧縮されることになるため、その不利益は大きなものです。

そのため、5000万円を超える借金については、通常の再生手続によるべきであるとされたことから5000万円要件は存在するのです。

5000万円要件の対象になる借金は?

住宅ローンは除外される

5000万円要件について判断する際、住宅ローンは除かれます。

そもそも、住宅ローンは不動産の購入等のための資金についての借金であるため、通常高額になるものですから、これを5000万円要件の判断対象にすると、住宅ローンを利用していることだけを理由に個人再生を利用できなくなり、それは適切ではないからです。

たとえば、住宅ローン2000万円、住宅ローン以外の借金4500万円を負っている場合、5000万円要件の判断の対象になるのは、住宅ローン以外の借金4500万円になりますから、個人再生を利用することは可能です。

ちなみに、個人再生の手続では、住宅ローンを利用して購入した抵当権の設定された自宅を維持するため、住宅ローンを対象から除いて個人再生する特別の制度がありますが、この制度の利用の有無に関わらず、5000万円要件の判断において、住宅ローンは除外されます。

担保権の付着したローンは担保の対象財産の評価額を考慮して計算される

次に、担保権の付着したローンについては、担保の対象財産の評価額を考慮して借金の総額を計算します。

たとえば、300万円の自動車ローンの残っている場合において、100万円の価値のある自動車を担保としている場合には、300万円-100万円=200万円を借金額として、5000万円要件について判断することになるのです。

このような担保権の付着している場合には、債権者は個人再生の手続とは別に担保対象の財産を処分して、借金の返済に充てることができるため、実質的に個人再生の手続の対象になるのは借金から担保の対象財産の評価額を控除した部分なのです。

保証債務は一律対象になることには注意

保証債務については一律5000万円要件の対象になることには注意しましょう。

つまり、夫の3000万円の住宅ローンについて保証人である妻は住宅ローンの保証債務を5000万円要件の対象から除外することはできないのです。

たとえば、夫の住宅ローン3000万円の保証人である妻は、それ以外の借金2100万円を抱えている場合には、借金総額51000万円になるため、個人再生の手続を利用できないのです。

消費者金融等の借金については過払金を考慮して計算される

最後に、消費者金融等からの借金については過払金を考慮して借金の額を計算することに注意しましょう。

過払金とは、過去に法律上の上限を超えて設定された利率に従い借金を返済していた場合に本来の返済すべき元金と利息を超えて返済したものをいいます。

たとえば、消費者金融の借金800万円、その他の借金4500万円の場合でも、過払金を考慮した場合には消費者金融の借金は300万円なるときには、借金総額は4500万円+300万円=4800万円であるため、個人再生の手続を利用することができます。

5000万円要件は個人再生の手続の完了するまで求められる

個人再生における5000万円要件は再生手続開始決定時から再生計画認可決定の確定するまで求められます。

個人再生の申立の時点において5000万円要件を満たさない場合はどうなるの?

まず、個人再生の申立の時点において、借金総額5000万円を超えることの明らかな場合、その申立は棄却されます。つまり、個人再生の手続はできなくなります。

この点、個人再生の申立前に住宅ローンの返済中の自宅を任意売却あるいは競売により処分した場合には、残債務は5000万円要件の対象になることに注意しましょう。

5000万円要件において対象外となる住宅ローンは、あくまでも抵当権の設定されている住宅ローンに限られるのです。

個人再生の手続開始後でも5000万円要件を満たさないと分かった場合はどうなるの?

それでは、個人再生の手続開始後に5000万円要件を満たさないことが分かった場合はどうなるのでしょうか。

たとえば、住宅ローン以外のローンについて不動産を担保にした借金4000万円と他の借金2000万円ある場合において、担保の対象財産である不動産の評価額は1500万円であるとすれば、借金総額は4000万円-1500万円+2000万円=4500万円となり個人再生の手続は利用できることになります。

ところが、個人再生の手続開始後、実は不動産の評価額は500万円に過ぎないと分かった場合には、借金総額は4000万円-500万円+2000万円=5500万円となり、5000万円を超えてしまいます。

このようなときには、個人再生における再生計画は認可されないため、結局、個人再生することはできないのです。

5000万円要件を満たさない場合にはどうすればいいの?

もし、個人再生を利用するための5000万円要件を満たさないため、個人再生による債務整理はできない場合には、どうすればよいのでしょうか。

この場合の選択肢は基本的には2つです。

1つは、個人再生ではなく、通常の民事再生手続を利用して債務整理する方法です。

もっとも、通常の民事再生手続を利用しようとする場合には、その手続は個人再生手続より複雑であること、手続を利用するために裁判所に納めることになる金銭は高額になること、債権者の過半数の賛成を必要とすることなど、個人再生と比較して利用条件は常に厳しくなります。

そのため、5000万円要件を満たさない場合であり、通常の民事再生を利用することは困難であるようなケースでは、自己破産の手続を利用することになるでしょう。

まとめ

個人再生を利用するためには借金総額5000万円以下であることを必要とし、これを個人再生における5000万円要件といいます。

5000万円要件を判断する際の借金総額の計算においては、①抵当権の付いた住宅ローンの額、②担保権の付着したローンにつき担保の対象財産の評価額を控除した借金額は控除されます。

消費者金融から借金については、いわゆる払い過ぎの利息である過払金を考慮した上での借金の額を対象にします。

5000万円要件は個人再生の手続の開始から終了するまで一貫して求められます。

つまり、個人再生の手続の開始時点では5000万円要件を満たしてるものと判断された場合でも、その後、手続中に5000万円要件を満たしていないと発覚した場合には、やはり個人再生の手続は利用することができなくなるのです。

もしも、5000万円要件を満たさないために個人再生の手続を利用できない場合は、基本的には、①通常の民事再生を利用する、②自己破産するの2つになります。

このうち通常の民事再生は、個人再生の手続と比較して、複雑かつ条件の厳しいものになりますから、多くのケースでは自己破産を選択することになるでしょう。

弁護士法人 高田総合法律事務所

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